楽天の「送料無料」に反旗 出店者、公取委に調査要請

2020/1/23 0:00
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記者会見する楽天ユニオンの川上資人顧問弁護士(左)ら=22日、東京都千代田区

記者会見する楽天ユニオンの川上資人顧問弁護士(左)ら=22日、東京都千代田区

ネット通販サイト「楽天市場」を運営する楽天と一部出店者の対立が深まっている。出店者の任意団体は22日、一定額以上の購入者への送料を一律無料にする楽天の規約変更が独占禁止法に抵触するとして公正取引委員会に調査を求めた。送料の負担増のほか、罰金を伴う違反点数制度などへの反発もある。公取委の今後の判断次第ではプラットフォーマーと取引先の関係に影響を与える可能性がある。

楽天は3月18日から、消費者が3980円以上を購入した場合(沖縄や離島などを除く)、サイトの表示を一律で「送料無料」に変更する方針を示している。

任意団体「楽天ユニオン」は22日、公取委に送料無料化への反対だけで1700筆超の署名を提出した。楽天市場の他の制度への反対署名を含めると延べ4000筆に上る。楽天ユニオンには楽天市場の約5万の出店者のうち300以上が参加済みという。代理人の川上資人弁護士は「優越的地位の乱用」にあたるとし、公取委に排除措置命令を求める請求書も出した。

公取委の菅久修一事務総長は同日の定例会見で「申告があれば必要な調査をして適切に対処する」とコメントした。公取委には「『送料無料化が出品者の売り上げ増につながる』との楽天側の主張は具体的なデータなどに基づいておらず説得力を欠く。規約変更は独禁法に抵触する恐れがある」との声もある。

「送料無料」を実施する場合、誰が実質的に負担するのかが焦点になる。店舗側が現在の商品価格に送料を上乗せし、「送料無料」として販売すれば、消費者に誤解を生じさせる恐れもある。

楽天は送料無料化によって店舗の売上高やリピーターが増えると説明するが、楽天ユニオンは「売れば売るほど利益が減る」と主張する。楽天は割安な自社物流網の整備を急ぐが、全国展開には時間がかかる。

ユニオンは同日の記者会見で方針撤回を求めた。約25年間、通販を手掛ける出店者は「宅配、梱包作業、決済手数料などで出荷1件あたり平均1600円の通販費用がかかる」という。現在1万1000円以上の購入で送料を無料にしているが、「(新ルールで)消費者が4000円ごとに購入するようになれば、通販コストは2倍以上に増えて赤字だ」と訴える。

一方で楽天は実証実験で、3980円以上の送料無料化で販売件数や集客力が上がった店舗があると説明する。野原彰人執行役員は同日、「ユーザーの変化に対応しないと選ばれない。成長のために出店者の理解を得る努力を続けていきたい」と述べた。

楽天が16年に導入した「違反点数制度」も、楽天ユニオンとの火種になっている。楽天は偽造品の販売や商品の表記違反などを点数化し、1年間の累計点数に応じて講習や違約金を課している。導入後、違反店舗数は7割減り「ユーザーの安全・安心の評価が上がった」(楽天)。一方でユニオンは「(商品画像の登録ルールなどの)ささいなミスでも点数加点がある」と撤回を求める。

楽天はネット通販が祖業で、1997年に楽天市場を始めて業界をけん引してきた。だが2000年に米アマゾン・ドット・コムが日本で事業を開始。ヤフーも19年にZOZOを買収するなど攻勢を強める。ニールセンデジタル(東京・港)の調査によると、19年11月時点で、通販サイトの利用者はアマゾンが4963万人と、楽天市場(4677万人)を上回る。

アマゾンは日本事業全体で18年だけで3千億円強を投じ、物流網の整備で先行する。直販事業が大半を占め、2000円以上の購入で送料を無料にしている。消費者には「送料無料」の意識が広がっている面もある。楽天は直販事業が少ないが、「バラバラの送料を分かりやすくしないと生き残れない」(楽天役員)と新ルールに理解を求める考えだ。

複数の出店者によると、楽天市場が他のネット通販より販売額が多いケースが目立つ。だが出店者とのあつれきが広がれば、楽天市場への出店離れにつながりかねない。概要が固まった新法「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」(仮称)は、巨大IT(情報技術)企業が契約条件の変更などを取引先に説明するよう義務づける。

楽天ユニオンは中小企業等協同組合法に基づき、4月ごろに事業協同組合の設立を目指す。楽天との団体交渉権を得る目的で、プラットフォーマーと取引先との関係に一石を投じそうだ。

■「優越的地位の乱用」、十分な交渉の有無焦点

独占禁止法の「優越的地位の乱用」にあたるかどうかの判断基準は多岐にわたる。今回のケースでは、条件の変更に関して双方の交渉が十分に行われたかどうかが大きな焦点になりそうだ。

独禁法に詳しい川島佑介弁護士は「楽天がいつごろからどのような形で出店者を対象に今回の施策の合理性や必要性を説明したのか。出店者の意見を踏まえてどのような協議、配慮を重ねてきたかが一つのポイントになる」と解説する。出店者が自主的な判断で変更に応じるのかも重視されるため、5万店の事業者のうち、賛成と反対の比率も公取委の判断のポイントになる。

このほか、送料無料化は合理的なのか、出店者に与える不利益はどの程度か、楽天側も何らかの負担を負うのか、といった点も検討されるとみられている。

ただ優越的地位の乱用の摘発は当局側の調査や違反認定などの負担が大きく、過去数年は正式な処分が出ていない。今回の件も「典型的でなく前例が乏しいなどの事情を考えると、公取委が調査するとしても、排除措置命令など正式な処分を下すのはハードルが高いのではないか」(川島氏)という声が多い。(工藤正晃、児玉小百合)

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