さいたま国際マラソン開催見送り まちづくりに影響も
さいたま市などが主催する「さいたま国際マラソン」の今年の開催が見送られることになった。難コースで有力選手の参加が見込みにくく、市議会では多額の負担金も問題視されていた。ただ、埼玉県を代表するイベントとして定着してきた側面もあるだけに、スポーツ先進都市実現を目指す市のまちづくり戦略に影響を及ぼしそうだ。

さいたま国際マラソンは財政難などで2014年に終了した横浜国際女子マラソンの後継大会として15年に始まった。主催者にはさいたま市のほか日本陸上競技連盟や埼玉県なども名を連ね、これまで計5回開催。コースは日本陸連の公認を受け、五輪や世界選手権の女子代表選考レースとして注目を集めてきた。
一方、コースに小刻みな起伏が多いことから選手の間では「好記録が出にくい」との不満が根強く、参加を見送る有力選手も目立った。東京五輪女子代表の残り1枠を争うレースに指定された19年12月の大会も、国内からの招待選手の出場は1人にとどまった。

運営側はコースの見直しに踏み切ったものの事態の好転は見込めず代表選考レースとして維持するのは難しいと判断、開催見送りを決めた。清水勇人市長は22日の定例記者会見で、見送りについて「現時点で話せる段階ではない」としつつ「有力選手が参加しやすい環境整備に努めてきたが、増加に至らず残念」と語った。
見送りの背景には市の負担金を巡る議論もあったとみられる。マラソンは主要国道の規制を伴う警備費用などがかさみ、市は17年度以降、毎回2億5000万円前後の負担金を拠出している。有力選手の出場が乏しいなかでの巨額の出費に、市議会では何度も「市民の理解は得られない」などの追及があった。
さいたま市はスポーツ先進都市の実現を目標に掲げ、大規模なイベントを開いて機運を高めてきた。国際マラソンはその象徴的な大会で、同時開催する市民マラソンを含めると毎回2万人前後を集める一大行事に成長した。市民にも定着しつつあっただけに、地元関係者は「見送りは苦渋の決断だ」と語る。
市は21年以降、市民マラソンとして実施する方向で検討を進めるが、代表選考マラソンの看板を下ろせばスポンサーの反応や市のまちづくり戦略に影響が出る可能性がある。15年の初回大会以降、特別協賛として応援ボランティア派遣などを続けてきた埼玉りそな銀行の池田一義社長は22日「(見送りが)事実なら大変残念だ。将来また開催されることを期待したい」とコメントした。