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姫路競馬7年半ぶり再開 地方の経営好転を象徴

2020/1/25 3:00
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7年半ぶりに蹄音(ていおん)が戻ってきた。2012年8月30日を最後に休止していた姫路競馬場(兵庫県姫路市)でのレースが15日、再開した。

同競馬場で洪水防止のための調整池の工事が行われていたことに加え、馬券売り上げの低迷など厳しい経営環境もあり、主催する兵庫県競馬組合は姫路の開催を休止していた。馬券のネット販売の普及で近年は経営環境も好転。工事も終了したことから姫路での開催を再開した。これほどの長期にわたって休止していた競馬場が復活するのは極めて異例だ。

全国的にみても地方競馬の売り上げは増加している。休止競馬場の再開は地方の主催者の体力に余裕が出てきたことを示す象徴的な出来事といえる。

15日の姫路競馬再開初日には約3000人の観客が集まった

15日の姫路競馬再開初日には約3000人の観客が集まった

真冬の空気はひんやりとしていたが、再開日の姫路競馬場の場内は待ちわびた観客の熱気にあふれていた。午前10時50分発走の第1レースから歓声が上がり、売店では専門紙が売り切れた。7年半前の開催の最終日のほぼ倍となる2990人の観客が集まった。

馬券の売り上げも4億7308万円を記録。県競馬組合が主にレースを行う園田競馬場(同県尼崎市)での19年4~12月の1日当たりの平均売上高の4億7584万円と同等の額を記録した。7年半前は大阪や神戸など大都市の近い園田と比べると、姫路の売り上げは8割ほどにとどまっていたが、差は小さくなった。23日までに6日間の日程を消化し、1日平均の売り上げは4億4041万円。話題性が高い再開直後であることを考慮しても、好調だったといえる。

休止前、売り上げはピークの4分の1

姫路休止前の12年当時、地方競馬は厳しい状況下に置かれていた。県競馬組合の12年度の売り上げも298億円と、ピークだった1991年度(1186億円)の4分の1にまで減った。

10年度には5億5100万円の赤字を計上。10~14年度は「存廃の見極め期間」と位置付けられ、期間内の累計が赤字となった場合は園田、姫路競馬の廃止を検討するという崖っぷちにまで追いやられた。

こうした時期に持ち上がったのが、姫路競馬場のコースの内側を掘り下げ、洪水防止のための調整池をつくる県の工事だった。工事のために姫路の開催を休止し、売り上げ規模の大きい園田での開催に集中した方が、収支改善にもつながると県競馬組合は判断した。

県競馬組合は姫路休止の間に、増収策に手を付けた。園田競馬場に照明を設置してナイター競馬を始めたほか、場外発売所の新規開設も進めた。ナイター設備の工事費用は、姫路の調整池工事に伴い、県から補償金として交付された約7億円を充てた。

加えて、12年秋に日本中央競馬会(JRA)のネット販売のシステムを使った地方競馬の馬券発売が始まった。中央競馬のファンを地方競馬に引き込む効果は絶大で、県競馬組合の売り上げも12年度を底に増加に転じ、18年度には653億円にまで回復した。

ネット販売が増加、姫路復活を後押し

このネット販売の好調が姫路開催復活の決め手となった。売り上げ増だけではなく、売り上げに占めるネット販売の比率が上昇したことが大きな意味を持った。

12年当時は競馬場内での売り上げが全体の約3割を占めていた。周辺の人口規模が大きく、来場者数も多い園田の方が当然、売り上げも多かった。12年度の1日当たりの競馬場での売り上げは園田が約5500万円だった一方、姫路は2000万円ほどにとどまっていた。ファンが競馬場や場外発売所に直接出向いて馬券を買うというスタイルが主流だった時代には、競馬場での売り上げにここまで大きな差があると、経営にダイレクトに響いた。これが姫路休止の要因の一つとなった。

だが、JRAのシステムを使った馬券発売が始まった12年秋以降はネット経由の売り上げが急増。全体に占める競馬場での売上比率は、いまでは7%にまで低下した。一方、12年度に全体の35%程度だったネット経由の売り上げは、約8割を占めるまでに拡大。競馬場の集客の多寡が全体の売り上げに与える影響が小さくなったことが、姫路再開を可能にした。

経営の厳しい時期は園田に開催を集中していた県競馬組合だが、2場体制は維持したいと考えていた。兵庫県競馬の開催日程は基本的に週3日。馬場が傷むため「これだけ多くの日程をひとつの競馬場でこなすのは難しい」(県競馬組合の米沢康隆副管理者)という。

定期的に馬場を改修する必要があるが、「最低4週間、天候などを考えて余裕を持たせるならば1カ月半くらいの工事期間をみなくてはいけない」(同)。その間、競馬を休止するとファンが離れる恐れがある。2場体制を維持すれば、園田の馬場改修の時期は姫路で競馬ができ、切れ目の無い開催日程を組める。

卓球場やサッカー場設けて有効活用も

今回の姫路競馬は2月6日まで。開催日数は12日と、再開したとはいえ少ない。園田のメンテナンスの期間だけ、姫路を開催するということであれば、来年以降も今回と同程度の日数にとどまる可能性が高く、姫路の稼働日数はかなり少なくなる。

開催日数の少ない姫路競馬場を有効に活用しようと、場内にスポーツ施設を設けた。卓球場やヨガなどができるスタジオをスタンド内に整備し、コース内の調整池には人工芝のサッカー場を造った。市民が気軽に使える施設を備えることで、競馬場への抵抗感を和らげる狙いもある。

これらの施設は姫路の休止中に行われたスタンドの改修時に設置された。姫路に限らず、地方競馬ではスタンドの老朽化が進んでいるケースが多く、改修は急務だった。ただ、売り上げの低迷期には手を付ける余裕がなかった。県競馬組合は15~19年度に姫路、園田でスタンドの耐震化や老朽化した設備の改修を実施。合計で約60億円の費用をかけた。県からも一部支出があったが、馬券による増収でこれだけの工事ができるほど体力が回復した。

JRAのシステムを利用した馬券発売が始まって以降、地方競馬の売り上げは全国的に伸びている。11年度の3314億円から毎年増え、18年度には6033億円となった。6000億円を超えたのは99年度以来、19年ぶりだった。

19年度も好調で4~12月で5296億円と前年同期比15%増。大井競馬場(東京都品川区)では年末に東京大賞典(G1)が行われ、その日の売り上げが92億円超と地方競馬の1日当たりの最高額を更新した。

大井競馬場では12月に東京大賞典が行われ、地方競馬の1日当たりの売り上げの最高額を更新した=共同

大井競馬場では12月に東京大賞典が行われ、地方競馬の1日当たりの売り上げの最高額を更新した=共同

浦和競馬場(さいたま市)は、「地方競馬の祭典」として各競馬場の持ち回りとなっているJBC(ジャパン・ブリーディングファームズカップ)を19年に初開催。1日で58億円を売り上げ、JRAの京都競馬場(京都市)を舞台にした18年を除くと、01年に始まったJBC史上で最高の売り上げとなった。浦和はJBC開催に備え、スタンドやコースなど、競馬場を改装していた。こうした投資も実を結んだ格好だ。

姫路競馬場の再開は、地方競馬全体の好調を反映した動きといえる。ただ、東京五輪後の景気の行方が分からず、ここまでの好調が今後も続くかどうかは不透明。ファンの掘り起こしや競馬の魅力を広く伝える方策を地道に推し進めることが、さらに重要になりそうだ。

(関根慶太郎)

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