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「東京の都市力向上、五輪は通過点」森ビル社長

Tokyo2020
2020/1/29 2:00
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森ビルの辻慎吾社長は東京と世界各都市を結ぶ直行便の少なさを問題視する

森ビルの辻慎吾社長は東京と世界各都市を結ぶ直行便の少なさを問題視する

7月の東京五輪開会式まで半年。56年ぶりに世界中から人々を迎え入れることになった東京に、五輪・パラリンピックは何をもたらし、どう変えるのか。都心の港区内で総事業費が約1兆円を超えるビッグプロジェクトを推進する森ビルの辻慎吾社長にオリパラによる影響を聞いた。

――今夏の東京五輪・パラリンピックは東京を変える契機となるのでしょうか。

「まず東京は今、分岐点に差しかかっていることを認識することが重要だ。アジアあるいは世界を舞台とした都市間競争のなかで勝ち抜ける都市に変貌できるのか、アジアの一地方都市として取り残されてしまうのか。激しい都市間競争にさらされていることを意識しなければならない」

「急がなければならないのは、グローバル企業がヘッドクオーターをおくのにふさわしい条件を整備することだ。単に経済都市という要素だけではなく総合的な力を高める必要がある」

「森ビルのシンクタンクである森記念財団が『経済』のほか『研究・開発』『文化・交流』『居住』『環境』『交通・アクセス』の6つの指標で世界の主要都市の総合力をスコア化しランク付けした調査(GPCI=世界都市総合力ランキング)を2008年から実施している。東京は3位にとどまり、1位の英ロンドン、2位の米ニューヨークに追いつけないでいる」

「前回の1964年の東京五輪では首都高速道路をつくり、ホテルを建設し、新幹線を通した。今回の五輪はハード面以外の都市力を引き上げる一つのチャンスとなる。例えば五輪に合わせてセキュリティーやテクノロジーが大きく進化する部分もあるだろう。重要なことは五輪の様々なレガシー(遺産)をいかにして東京の都市力につなげられるかということだ」

――都市間競争を勝ち抜くために、東京は何を変えなければなりませんか。

「いくつかある問題点を明確にし、これを解決することだ。国際的な交通の利便性改善はその一つ。ロンドンから世界各都市への直行便は300以上の路線があるのに対して東京(羽田・成田)を起点とする直行便は約100の路線しかない。残りの200以上の都市へは直行便がないため目的地以外の都市で乗り継ぐ必要がある。このほかにも法人税が高いといった問題、新規事業や起業などで役所の認可をいくつもとる必要があるといった課題も多い」

「東京が持つ潜在的な経済成長力はまだまだ大きい。ニューヨークのマンハッタンと東京都心5区のオフィスの総面積を比べてみると東京はマンハッタンよりも格段に広い。しかも治安はよく犯罪も少ない。道路網は機能的で渋滞は少なく、電車は2分おきに正確に運行している。アジアや世界と比べても東京は経済活動を行いやすい都市であることは間違いない」

「大切なのは五輪の後だ。ロンドンが12年の五輪を契機にGPCIの順位を2位から1位に上げたが、見習うべきはその後もそのポジションを維持していることだ。五輪は2週間、パラリンピックを入れても1カ月で終わるが、都市づくりはその後も続く。五輪は都市力を引き上げる通過点にすぎない」

――五輪後の景気失速を懸念する見方もあります。

「大きな景気失速はないと考えている。1964年の五輪の時には、高速道路や新幹線など社会インフラ整備を急ぐ必要もあって、当時3兆円程度だった国家予算のうち、1兆円程度を五輪関係に投入した。今の国家予算は100兆円程度だが、今回の五輪ではメインスタジアムの国立競技場の建設費ですら『2500億円、いやいや1500億円』といった議論がでるほど経費を削り込んでいる。景気を失速させるほどの影響はない」

――東京の都市力を高めるために森ビルは何ができるのでしょうか。

「これまでも森ビルは様々なプロジェクトを通じて都市づくりの新たな可能性を示唆してきた。日本で初めての都市型複合開発となった1986年の『アークヒルズ』(東京・港)、『文化都心』をコンセプトにした2003年の『六本木ヒルズ』、そして多様な人々が集い、人間らしく生きられる新たなコミュニティー『モダン・アーバン・ビレッジ』をテーマとした『虎ノ門・麻布台プロジェクト』(23年完成予定)もその挑戦の一環だ。挑戦し続けるのが『森ビルらしさ』であるし、挑戦をやめてしまえば森ビルの存在意義はない」

辻慎吾(つじ・しんご)
1985年(昭60年)横浜国立大院工修了、森ビル入社。2001年タウンマネジメント準備室担当部長、06年取締役、08年常務、09年副社長。11年6月より現職。広島県出身。59歳。

(聞き手は前野雅弥)

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