今日も走ろう(鏑木毅)

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校庭使って外遊びの場を 子供の運動能力、海外と差

2020/1/23 3:00
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日本の子供の運動能力は国際的に比較してもかなり低く、かつ年々下がっているという。

実は昨年の夏に偶然、その現実を肌で感じる機会があった。世界最高峰のトレイルランニングレース、UTMBでは世界各国・地域から参加者が集まる。1週間の開催期間中には、当日エントリー可能で子供なら誰でも参加できるミニレースがいくつも実施される。そこに小学1年の娘も出場したのだが、世界の同年齢の子供たちの速さにまるで歯が立たなかった。

スタートすると各国の子供はまるで100メートル競走のような勢いで飛び出したのにもかかわらず、さほどスピードが落ちることなく900メートルを走り切ってしまった。娘の足は決して速くはないのも確か。それでも日本から出場したほかの子も、運動が得意という子でさえ後ろの方でゴールしており、運動能力のあまりの差に驚かされた。

昨年のフランス合宿では、練習の合間を縫って娘を山歩きに連れ出した

昨年のフランス合宿では、練習の合間を縫って娘を山歩きに連れ出した

この差については一つ思い当たる節がある。欧米では、小さな子が全力で外遊びに興じている光景を頻繁に目にする。公園に設置されている遊具も、日本と比べると難易度の高いものが多く、子供たちは筋力や俊敏性、バランス保持力など知らず知らずのうちに鍛えられるのではないだろうか。

一方、日本で自宅近くを散歩していると、神社の境内のベンチで何人かの小学生がゲーム機に夢中になっている姿をよく見かける。欧米のように子供が全力であたりを駆け回ったり、ボール遊びをする様子を目にすることが減ってしまった。

こうした運動能力の低下は、とりわけ都市部の子供たちに顕著なようだ。大規模な公園や施設はあるけれど、これらの場で遊ばせるには、一定以上の費用、移動時間が必要となるものばかり。日常的に自由に遊ばせる場所があまりに少ない。実際、我が家の娘が育った環境も、思う存分駆け回れる場所は決して多くはなかった。子供の運動能力は日常の生活習慣を通じて培われるとするなら、それが低下するのは至極当然の結果ということになる。

1970年代に群馬県の田舎で育った私には遊べる場所は無数にあり、放課後の校庭で日々、暗くなるまでドッジボールやサッカー、フットベースなどに夢中になっていた。ところが昨今は防犯上の問題や管理者責任という社会のハードルがクローズアップされ、校庭利用はかなり限定的だという。地域統合型スポーツクラブなどの施策も打ち出されてはいても、もっと手軽に自由に子供が能動的に遊べる場が必要だろう。そのための校庭の活用は、子供たちに遊びの場を提供する最も手近な方策ではないだろうか。

地域の子育て世帯に、施錠された門を自由に通れるパスカードなどを配り、「遊びコーディネーター」を校庭に常駐させ近隣の子供たちの遊びの拠点にしてはどうだろう。管理面での懸念、人材不足、予算の制約など課題は山積み。だが、子供の運動能力の低下は単にトップレベルの競技スポーツの成績低下にとどまらず、心身の健康を手に入れる上でもっと根源的な問題を内包しているように思う。

(プロトレイルランナー)

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