トランプ氏「関税政策を堅持」、ダボス会議で保護主義譲らず
【ダボス(スイス東部)=河浪武史】トランプ米大統領は21日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での演説で「中国との貿易合意は関税の力でなし遂げた」と強調した。通商協定を有利に導くため関税政策を堅持する考えを示したもので、各国の警戒は解けそうにない。「減税や規制緩和で米経済はかつてない活況にある」とも主張。11月の大統領選を前に有権者へのアピールに終始した。

トランプ氏は21日開幕したダボス会議の冒頭で演説した。焦点の通商政策については「中国の不公正貿易は悪化の一途だったが『第1段階の合意』によって、同国は知的財産権の保護などで同意した」と成果を誇った。中国は15日に米国からの輸入を2年間で2000億ドル増やすとの合意に正式署名したが、トランプ氏は「3000億ドルになるかもしれない」と主張した。
歴代政権で難航した中国との貿易交渉で合意にこぎつけたのは「関税の力が大きい」と強調。相手国の譲歩を引き出す保護主義的な関税政策の成果を誇示した。「中国と第2段階の交渉を始めるために、多くの対中関税を堅持する」とも主張。欧州連合(EU)から離脱する英国などとも通商交渉を始める考えを表明した。
トランプ政権は20日に発足から3年がたち、同演説は大統領選に向けて成果をアピールする場となった。トランプ氏は「大型減税と規制緩和によって700万人分の雇用が増え、失業率も50年ぶりの水準に下がった」と指摘。金融市場にも触れて「米連邦準備理事会(FRB)の利下げはゆっくりだったが、株価は50%以上も上昇した」と述べて「米国モデルは世界の模範になる」とまで主張した。
ただ、野党・民主党は国民皆保険や富裕層への増税などを掲げて「打倒トランプ」を目指している。トランプ氏は「急進的な社会主義者が経済を破壊しようと試みている」と民主党左派を批判。「市場経済の革新力や技術力で課題を乗り越えるべきだ」と語った。
トランプ氏がダボス会議で演説するのは2018年に続いて2回目。21日には米議会上院で、トランプ氏のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判の実質審理が始まり、米国内で与野党の攻防が強まる。トランプ氏はわずか1泊2日の短期滞在でスイスから米国に戻り、弾劾裁判の早期終結を優先する。