消費財も「アジャイル」開発 P&Gやユニリーバ

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/1/24 2:00
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消費財メーカーの幹部も最近「アジャイル」という言葉をよく使う(写真はP&Gの洗剤「タイド」)=ロイター

消費財メーカーの幹部も最近「アジャイル」という言葉をよく使う(写真はP&Gの洗剤「タイド」)=ロイター

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 ソフトウエア分野で急速に普及した短期間での開発手法「アジャイル」が、消費財分野にも広がりつつある。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や英蘭ユニリーバなど世界の大手メーカーが、戦略を説明する場などでこの言葉を多用するようになってきた。消費者の選択肢が増え変化も激しくなり、従来の手法ではニーズに対応できなくなってきたためだ。CBインサイツが各社の動きをまとめた。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

「アジャイル(機敏という意味)」という言葉は通常、テクノロジー業界のソフトウエア開発手法を表すために使われる。今ではより広い意味を帯びるようになっている。

上場企業の幹部が、戦略的、組織的、文化的観点から自社に消費者の好みの変化や競争上の脅威への素早い対応力があることを示すため、「アジャイル」や、顧客や環境の変化を素早く察知して対応できる能力「アジリティー」を使うようになっているからだ。

決算発表での「アジリティー」という言葉への言及回数はここ10年で着実に増えている。

決算発表での「アジリティー」「アジャイル」への言及回数

決算発表での「アジリティー」「アジャイル」への言及回数

多くのテクノロジー企業が決算発表で「アジャイル」や「アジリティー」という言葉を多用する一方、ユニリーバやP&Gなどの消費財メーカー大手もイノベーション(革新)を示すためにこれらの言葉を頻繁に使っている。

■なぜアジリティーが必要なのか

起業コストの低下と資金調達環境の改善により、消費者の選択肢は爆発的に増えている。2018年の米食品・飲料スタートアップの資金調達件数は300件を超え、調達額は17億ドル以上と16年の9億4000万ドルから増えた。

消費者の好みもダイナミックになっている。従来は一流のブランドを築き、賞を獲得するようなテレビCMを打ってテレビの視聴者とつながりを持つだけで、利益を得る仕組みを構築できた。

だが今では、グーグルやアマゾン・ドット・コム、動画共有サイト「ユーチューブ」、写真投稿サイト「ピンタレスト」など商品を見つける媒体はいくらでもある。さらに消費者もデジタルを使いこなせるようになっているため、競争の基盤は一流のブランドから一流の製品へと移りつつある。

■いかにして素早さを身に付けるか

1.スタートアップの買収で時代遅れのブランドをてこ入れする

P&G、ユニリーバ、ネスレ(スイス)、仏ロレアルの消費財大手4社がこの5年で買収した企業は計60社を超える。合計時価総額が1兆ドルの4社にとってこうした買収はささいなことでしかないが、新たに得た知識や能力を生かして自社の様々な事業でイノベーションを促進している。

例えば、ネスレは17年、消費者の健康志向に応えるためにビーガン(完全菜食主義者)向け食品メーカー、米スイートアース(Sweet Earth)を買収した。今では冷凍食品「スタウファーズ」のラザニアや「ディジョルノ」のピザでスイートアースの植物肉を使った商品を提供している。

2.イノベーション手法を刷新する

消費者の好みが進化し、新商品を市場に投入するスピードが加速しているため、消費者調査や(一部の消費者を集めて議論させ、その声を開発に生かす)フォーカスグループなど従来の市場調査は時代遅れになりつつある。

例えば、P&Gは多くの新製品のイノベーションを「リーン(効率的)」なやり方に移行している。市場にもっと迅速に商品を投入するため、限られた数量の試作品をオンラインで販売し、売れ行きやレビュー、コメントから消費者の反応をリアルタイムで分析している。

3.新しいテクノロジーを試す

消費者の需要に素早く対応するため、人工知能(AI)を活用している消費財メーカーもある。

例えば、クリスチャン・ディオールやアディダスなどのブランドは仏ヒューリテック(Heuritech)の画像認識技術を使ってファッショントレンドを分析している。

各社は新たな需要を予測して在庫の流れを最適化するため、プレディクティブアナリティクス(予測分析)も活用している。米ナイキは19年、AIを使って様々な販売チャネルの購買パターンを予測する米セレクト(Celect)を買収した。

■単なる流行語から行動へ

機能性飲料の人気の高まりやAIを使った肌診断などディスラプション(創造的破壊)がさらに起こる兆しがあるため、消費財メーカー各社はアジャイルやアジリティーを単に流行語にとどめるのではなく、行動に移さなくてはならなくなるだろう。

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