「脱一律」で人材磨く 経団連、労使交渉変革へ指針

2020/1/21 14:00
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経団連は21日、春季労使交渉の経営側の指針となる経営労働政策特別委員会報告を公表した。年功序列賃金など日本型雇用制度の見直しに重点を置いた。海外で一般的な職務を明確にして働く「ジョブ型」雇用も広げるべきだと訴えた。海外との人材獲得競争に負けないよう、雇用にも世界標準の仕組みを取り入れるなど時代に即した労使交渉への変革を求めた。

春季労使交渉は、28日に開く経団連と連合の労使トップ会談から始まる。3月11日の集中回答日に向けて、個々の労使が交渉を進める。

従来の経団連指針は、経営側が賃金交渉にどう臨むべきかという点に関心が集まっていた。ただ経済のグローバル化やデジタル化が進み、収益環境は企業ごとに異なる。中西宏明会長は「経済界の代表が詳細な賃上げ手法を示すことは現実的ではない」と語る。指針は「各社一律でなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」との指摘にとどめた。

代わりに重点を置いたのが、新卒一括採用と終身雇用、年功序列を柱とする日本型雇用制度の見直しだ。「現状の制度では企業の魅力を十分に示せず、意欲があり優秀な若年層や高度人材、海外人材の獲得が難しくなっている」と指摘。さらに「海外への人材流出リスクが非常に高まっている」と危機感を示した。

指針はジョブ型雇用が高度人材の確保に「効果的な手法」と提起した。外国企業では、ジョブ型による採用が広く浸透。高額な給与を提示して、事業計画に必要な人材を確保している。米国のコンサルティングDraupによると、日本のビジネスの現場で活躍する人工知能(AI)人材は1万8千人。米国の13万人や中国の7万人より大幅に少ない。硬直的な雇用制度がその一因だ。

経団連の経営労働政策特別委員長を務める大橋徹二コマツ会長は21日の記者会見で「(従来型とジョブ型双方の利点を踏まえて)労使で自社に適した雇用制度を追求すべきだ」と述べた。

雇用や賃金体系を柔軟に運用しようとする動きが出始めている。日本経済新聞社の「社長100人アンケート」では、ジョブ型雇用を導入しているもしくは導入を検討している企業が63%に上る。

経団連が2019年秋に実施したアンケートによると、ベースアップ(ベア)の原資を「若年層へ重点配分する」と答えた企業は33%を占め、14年以降の賃上げ局面で最高になった。

雇用の柔軟化が進めば、経営陣と労働組合が向き合う構図が一般的だった労使関係も変革を迫られる。欧米企業は「社内でも雇用契約が多様なため、企業が個々の社員との労使関係を重視し、待遇など個別に協議している例が多い」(経団連)という。

指針は、労組の交渉姿勢にも注文をつけた。業界横並びの賃金交渉が「実態に合わなくなっている」と指摘。また個別企業でも労働組合の加入率低下を背景に「全社員対象の一律的な賃金要求は適さなくなっている」と言及した。経営側と労組の垣根を越えた異例の問題提起は、連合などの反発を呼ぶ可能性もありそうだ。

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