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「尋常でない」泥臭さなく U23日本、アジアで惨敗
サッカージャーナリスト 大住良之

2020/1/23 3:00
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東京オリンピックへの出場権をかけたアジアU-23選手権は、まだタイで続いている(決勝は1月26日)。しかしそこに日本代表の姿はない。グループリーグB組でサウジアラビアとシリアにともに1-2で連敗し、その時点で敗退が決定。第3戦も、MF田中碧が前半追加タイムに退場処分を受けて10人となり、かろうじてカタールと1-1で引き分け。「オリンピック・ホスト国」が、結局1勝もできずにタイを去ることになった。

日本―カタール戦の前半、指示を出す森保監督=共同

日本―カタール戦の前半、指示を出す森保監督=共同

森保監督は挽回力をたたえたけれど…

「連敗のストレスがたまるなか、選手たちは練習だけでなく、ホテルでも選手ミーティングをするなど、『リバウンドメンタリティー』を見せてくれた。きょうも、前半で10人になったが、ロッカールームでは逆にやってやろうという雰囲気があった」

カタール戦後、森保一監督はそう語った。

だがそれでも、3戦を通じて痛切に感じたのは、選手たちのメンタルの弱さ、戦いに臨む姿勢の「甘さ」だった。「リバウンドメンタリティー」はまだまだ足りなかった。

サウジ戦もシリア戦も、ボールを圧倒的に支配したのは日本だった。支配率はほぼ7割。しかしその割に、決定的な崩しができたのは両試合とも数回ずつだった。ボール支配が始まると日本の選手はリスクを避けるプレーに走り、チャレンジはほとんど見られなくなった。守備を固める相手は日本のパスミスを拾ってカウンターを繰り出し、攻撃と同様にチャレンジをしない日本の守備を破った。サウジ戦敗戦を受けて「背水の陣」だったはずのシリア戦に、森保監督は先発を6人入れ替えて臨んだが、試合はまるで双子のようだった。

そしてカタールとの第3戦も、代わり映えはしなかった。後半、10人になって逆にチャレンジの姿勢が出るかとも思ったが、10人でも日本は相変わらず安全にパスを回し、1点を先制したもののPKで同点とされ、勝利はつかめなかった。

VAR判定でレッドカードを受け退場処分となる田中碧(左)=バンコク(共同)

VAR判定でレッドカードを受け退場処分となる田中碧(左)=バンコク(共同)

この大会の日本は、3試合ともビデオ副審(VAR)によるPK判定で1点ずつを失い、第3戦の田中碧の退場もVARが「重箱の隅をつつく」ような事象を見つけ出して主審に退場処分を迫ったもの。多分に不運な面があった。

しかし「1分け2敗」という、最近のアジアの大会では記憶にない悲惨な結果になった原因がVARにあるわけではない。すべて自分たちの責任だ。

負けて突っ伏していいのは高校生まで

私が最も失望したのは、第3戦の試合後、何人もの選手がピッチに突っ伏してしまったことだ。まるで「力を出し尽くした」かのように感じたファンも多かったかもしれないが、プロ(まだプロでない選手もいるが)として恥ずべき行動と言わなければならない。

たしかに10人でも最後の最後まで勝利を追い、相手ゴールに襲いかかっていた。彼らなりに、力は絞り尽くしたのだろう。しかし「勝利」という結果が出なかったのなら、たとえ呼吸さえできない状況でも、胸を張って立ち、その結果を受け止めるという態度が必要ではないか。それがプロの「誇り」というものだ。グラウンドに突っ伏してしまうのは、その対極にある最も恥ずべき「自己憐憫(れんびん)」であり、許されるのは高校生までだ。

森保監督が「見せてくれた」と語った「リバウンドメンタリティー」とは、失敗しても、いや失敗したからこそ次に立ち向かう姿勢を言う。だが、2試合を受けての3戦目、カタール戦の前半は前の2試合とあまり変わらず、後半は10人になっても攻撃し、点を取って勝とうという気持ちはあったものの、それは「通常レベル」を超えていなかった。

カタールと1-1で引き分け。1勝もできずに大会を終え、うなだれる日本イレブン=共同

カタールと1-1で引き分け。1勝もできずに大会を終え、うなだれる日本イレブン=共同

ひとつの話を引き合いに出したい。2003年12月に行われた東アジア選手権の最終日、勝たなければ優勝できない日本は、引き分けでも優勝の韓国と対戦。だが前半18分にFW大久保嘉人が2枚目のイエローカードで退場となる。

「一人ひとりが120%走れ!」

そのハーフタイム、監督ジーコは選手たちにこう求めた。そして後半、選手たちは信じ難いほどの動きと戦いを見せ、韓国を防戦に追い込んだ。結局0-0で終わって優勝を逃したが、大きな称賛を浴びた。彼らは、この試合の後半、「尋常でない力」を出したのだ。

「チクショウ」と言いながら走り続け

もうひとつ、話をしたい。1982年のワールドカップ・スペイン大会、2次リーグのイタリア対ブラジル。先制されたブラジルはすぐに同点に追い付いたが、後に鹿島アントラーズの監督となるMFトニーニョ・セレーゾの痛いミスパスで再度イタリアに先行を許す。

しかし後半、左サイドから右のファルカン(1994年日本代表監督)にパスが出ると、トニーニョ・セレーゾはピッチの中央から「何が起きたのか?」と思うような猛烈なダッシュを見せてファルカンを外から追い抜いた。イタリア守備陣がその猛烈な追い抜きに気を取られた瞬間、ファルカンは内側にボールを運び、左足で強烈なシュートをゴール左隅に叩き込んだ。

シリア戦、クロスに飛び込むが、決められなかった上田。大会を通じ、日本は劣勢を跳ね返そうとする力が乏しかった=共同

シリア戦、クロスに飛び込むが、決められなかった上田。大会を通じ、日本は劣勢を跳ね返そうとする力が乏しかった=共同

後半が始まってからずっと、トニーニョ・セレーゾは泣きながらプレーしていたと、ブラジルでは伝えられている。前半の失点の責任を一身に受け止め、1プレーごとに「チクショウ、チクショウ」と言いながら、歯を食いしばって走り、戦っていたと……。

カタール戦を見ながら、日本の誰がトニーニョ・セレーゾのような気持ちでプレーしているだろうかと考えた。

「オリンピックの金」を、華麗にパスをつなぐサッカーで手にできるはずがない。その舞台に立つためにアジアのライバルたちが見せた「尋常でない力」を日本選手たちが出せるようにならなければ、「金」どころか、アジアU-23選手権のように1勝もできずに大会を終えることになる。

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