和歌山市、断水中止で混乱 水道管老朽化は他都市も
水道管工事に伴い最長3日間の大規模断水を予定していた和歌山市は20日、一転して中止を発表した。工事が当初の想定より小規模で済んだためだが、突然の方針転換で人繰りが付かない飲食店が開店を遅らせるなど市内は混乱した。同市は今後、漏水があっても大規模断水を回避できるよう態勢を見直す考え。水道管の老朽化対策は他都市にも共通の課題だ。

和歌山市の尾花正啓市長は20日、「ご迷惑をかけて申し訳ありません」と陳謝した。同市は8日に漏水を確認。破損箇所も絞り込み「直径約80センチの基幹となる水道管から漏れた」と判断したが、修繕工事の手法の検討に時間がかかり、19日夜からの断水計画を発表したのは16日だった。20日未明、実際に漏水したのは近くの直径約15センチの枝管であることが判明。工事はすぐに終わり断水は回避できた。
ただ、当初の想定では約3万5000世帯(約8万人)に影響が出るとされ、JR和歌山駅の駅ビル「和歌山ミオ本館」地下1階の飲食店5店は、3日とも休業することを予定していた。断水中止を受けて通常営業を決めたが、スタッフや食材などの手配が間に合わず開店が遅れた。飲食店関係者からは「広報がもっと十分であれば、こちらもスムーズに対応できた」との声が上がる。
法定耐用年数の40年を超える水道の割合を示す経年化率は、和歌山市で16.9%(2018年度)。中核市の全国平均(20.9%)を下回るが、水道管の老朽化は進んでおり、漏水の可能性は残る。市水道工務部維持管理課は水道管の1カ所が漏水しても、断水を回避できるよう「別の水道管を経由して水を送るネットワーク化を進めたい」と話す。
同様の課題は他の自治体に共通する。京都市は1955年ごろから77年までに敷設された「老朽配水管」が市全体の約1割を占める。市水道部管理課は「限られた予算ではなかなか水道管の更新は進んでこなかったのが実情。和歌山市の事例は、全国どこでも起こりうる」と話す。
大阪市水道局によると、市内の水道管のうち40年を過ぎた水道管の割合は18年度末時点で48%。同市は断水を防ぐため、古い水道管を地震に強い新しい水道管に取り換える耐震化のための10カ年計画に18年度から取り組み、水道管更新を民間事業者に任せるPFI管路更新事業の導入も検討している。
神戸市も配水管の更新を急ぐほか、水道管の劣化を予測する人工知能(AI)を開発する米フラクタと19年に連携。5年間で漏水が起こる確率を判定できるかどうかの実証実験を進める。価格面や実用性などを考慮して、21年度以降からの導入に向け検討する。