国富、20年ぶり水準に回復 18年末3457兆円
内閣府が20日発表した国民経済計算年次推計によると、官民合わせた国全体の正味資産(国富)は2018年末に3457.4兆円と、17年末から2.2%増えた。3年連続の増加により、20年前の1998年末以来の水準に回復した。橋や道路などのインフラ整備が堅調で固定資産が過去最高となったほか、地価上昇が続いて押し上げ要因になった。

国富は土地や住宅、工場などの資産から負債を差し引いた総額で、国全体の豊かさを示す。家計や企業、政府などの各部門を合算している。
98年は前年の97年とともに金融機関の破綻が相次いだ。その後、国富は地価の下落とともに減少し、00年代半ばになって増加に転じた。リーマン・ショックのあった08年から減少したが、11年を底に地価上昇などで再び増加傾向となっていた。
固定資産は6年連続の増加で、比較可能な94年末以降では過去最高の1808.8兆円。17年末と比べると、盛んな公共投資を映してインフラなど構築物が19.3兆円(2.2%)増えた。人手や資材などの需給の逼迫による建設コストの上昇も資産価値の面で押し上げ要因となった。企業活動も活発で機械・設備は2.4兆円(1.1%)、研究・開発などの知的財産生産物は2.7兆円(1.8%)伸びた。
固定資産以外では、土地が28.9兆円(2.4%)増えて1226.9兆円になった。地価の上昇基調から5年連続で前年を上回った。金融資産は株価の下落で縮小したが、計算上は負債となる外国人保有株の目減りで対外純資産は12.3兆円(3.7%)拡大して341.6兆円となった。
国富を部門別にみると金融以外の法人企業が135兆円(32.5%)の大幅増。負債に計上される株の発行部門のため、株安が負債の圧縮につながった。逆に株を資産として持つことが多い金融機関は11.5兆円(7.3%)減った。同様の理由で政府は17.6兆円(37.0%)、家計は33.8兆円(1.3%)減少した。
家計の金融資産でも、現金・預金は15.5兆円(1.6%)増えて985.3兆円と、1千兆円の大台に迫る。アベノミクスによる金融緩和を反映しているとみられる。
国民総資産は過去最高だった17年末の1京887.5兆円から4.1兆円減ったが、1京883.4兆円で過去2番目の高水準だ。金融資産の減少を非金融資産の伸びが補っている。