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東地中海のガス田が火種 イスラエル開発にトルコ反発

【カイロ=飛田雅則】東地中海の天然ガス開発を巡り、周辺国の主導権争いが激しくなっている。イスラエルはエジプトにガス輸出を始め、さらにギリシャなどとパイプライン建設で合意し、欧州への供給を狙う。トルコは反発し、この計画を妨げるようにリビア暫定政権と組んで地中海に排他的経済水域(EEZ)を設定した。トルコがリビア内戦への介入を強めた背景ともなり、地域の火種になっている。

イスラエル、ギリシャ、キプロスの首脳は2日、地中海を横断する海底パイプラインの建設で合意した=ロイター

東地中海では2010年前後からガス田の発見が相次ぎ、イスラエルやエジプト、キプロスが開発を進めた。欧州連合(EU)は天然ガスの4割をロシアに依存しており、調達先を多角化するため地中海のガスに注目している。

イスラエルは15日、沖合で採掘したガスをパイプラインでエジプトに供給し始めた。一部をエジプトの施設で液化し、欧州に輸出する。イスラエルのシュタイニッツ・エネルギー相は「エネルギー大国になる祝福すべき瞬間だ」と強調し、エジプトのモッラ石油・鉱物資源相は「両国の利益に貢献する」と応えた。

イスラエルはエジプトへの供給に加え、ギリシャとキプロスと2日、海底パイプラインの建設で合意した。ガス田からギリシャまで、欧州の消費量の10%に当たるガスを輸送する計画で、25年の稼働を目指す。

トルコはこの計画が自国の利益を損ねるとみて反発する。イスラエルと協力するキプロスをトルコは国として承認していない。トルコは独自にキプロス沖でガス田開発に乗り出し、19年11月には地中海の対岸にあるリビアの暫定政権とEEZの境界を定める協定を結んだ。イスラエルなどが計画するパイプラインのルートを遮断する狙いと見られている。

トルコは国土を横断してアゼルバイジャン産ガスを西へ運ぶトランスアナトリア・ガスパイプライン(TANAP)を開通させている。ここに東地中海産ガスも取り込んで欧州に輸送し、稼働率を上げる思惑も透ける。資源に乏しいトルコは周辺のガス産出国と欧州をパイプラインで結ぶ「輸送ハブ」構想を持つ。通行料を確保し、資源輸送ルートの要衝として自国の戦略性を高めるシナリオを描く。

トルコの動きに周辺国は警戒を強める。エジプトやイスラエルなどは16日、カイロで「東地中海ガスフォーラム」を開き、ギリシャやキプロスも加えてガス開発・輸送で協力することを確認した。ギリシャの環境・エネルギー相は「トルコの動きは違法」と批判した。

EUは地中海のガスに期待するが、加盟国のギリシャやキプロスを全面的に支援することが難しい状況にある。内戦を逃れギリシャに不法入国したシリア難民をトルコに送還することで、EUとトルコは16年に合意している。難民の流入を懸念するEUはトルコに強い態度をとれずにいる。

トルコとイスラエルは聖地エルサレムの帰属問題などで対立が続く。ギリシャ系が多数を占めるキプロス島ではトルコが北部を占領し、ギリシャ系とトルコ系の分断が続く。ガスをめぐる争いにはこうした歴史的、政治的な背景が影を落としている。調停役が不在のまま対立がエスカレートする恐れがある。

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