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中部さん、アドレスってそんなに大事ですか?(下)

2020/2/4 3:00
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 「アドレスこそゴルフの基本であり、ゴルフのすべてだ」とアドレスの重要さを亡くなるまで説いた中部銀次郎さん。それはなぜなのか? もっともっと知りたいと、天国でゴルフを楽しんでいる中部さんに詳しく聞いてみた。(日本経済新聞出版社「書斎のゴルフ VOL.45」から)

左手小指に力を入れてグリップしてみる

──最後にグリップ自体についてお聞きしていきたいと思います。中部さんは中学から高校に上がったときに大改造を行ったそうですね。

中部 私はジュニアから重い大人のゴルフクラブを使ったこともあり、それを振り切るためにかなりのストロンググリップになっていました。左手の甲が完全に上を向いているぐらいでした。ところがそんなある日、何かの雑誌でベン・ホーガンの「モダンゴルフ」の記事が掲載されていたのです。そこに描かれていたホーガンのグリップはスクエアグリップで左手の甲は目標を指していました。私は本能的に、ホーガンのようなグリップに直したほうがいいと直感したわけです。

──スクエアグリップはその頃のスタンダードだったのですか?

中部 そんなことはありません。大人もストロンググリップだったと思います。ですから、ホーガンのグリップは奇妙な感じがしたものです。しかし、それでもこちらが正しいのだという気持ちになりました。しかし、いざホーガンのグリップをまねて構えてみると右に飛び出しそうに思えて、実際に打つと右に飛び出して大きくスライスしていきます。何とかうまく打とうとするのですが、そのうちにソケットに当たってシャンクまで飛び出す始末です。しかも手からクラブが滑り抜けるような気にもなりました。

──それは大変でしたね。

中部 しかし、ホーガンは「グリップがスイングを作る」と言っていますし、「グリップはスイングの心臓だ」とも言っています。ですから、このホーガンのグリップでうまく打てるようにスイングも改造しました。膝に余裕を持たせるなどアドレスも改め、テークバックの引き方も変え、トップの位置も変えました。つまり、スイング大改造となったわけで、自分のものとするまで3年はかかりましたが、今となれば本当にこのときにやって良かったと思っています。

子供の頃はストロンググリップだった中部さん。ホーガンのスクエアグリップを取り入れた結果、思い切り振っても致命傷となるようなフックはなくなり、安定したストレートかフェードの球筋となった。左手の甲が目標を向くグリップだ

子供の頃はストロンググリップだった中部さん。ホーガンのスクエアグリップを取り入れた結果、思い切り振っても致命傷となるようなフックはなくなり、安定したストレートかフェードの球筋となった。左手の甲が目標を向くグリップだ

──高校2年で関西学生のメダリストになって注目され、その後も浪人中に日本アマに初出場してベスト4、翌年大学に入って2位、そして2年生になって優勝ですからね。強烈に上達されました。

中部 ホーガンのグリップにしてから、思い切りクラブを振っても、球筋がストレートから軽いフェードになって、左に行くことがなくなりました。それでぐっとスコアが安定しましたね。

──その後、ずっとそのグリップですか?

中部 年齢を重ねるうちに少しずつ左手はかぶりました。いわゆるストロンググリップです。そして親指を伸ばさずに詰めたショートサムにします。そのほうが力を入れなくともしっかりと握れますからね。でも右手はスクエアグリップにしています。そうして左手7分、右手3分ぐらいの力で握っています。なぜなら5分5分ですと、インパクトで右手にどうしても力が入るために、右手が強くなって球が曲がってしまうからです。アドレスで左手7分、右手3分だと、インパクトのときに5分5分になりちょうど均等になって、球が真っすぐに飛びやすくなります。また、スイングは左腕を軸として振りたいので、グリップも左手に力を多く入れておいたほうがいいわけです。

──では、左右10本の指で一番しっかりと握る指はどれですか?

中部 左手の小指を一番しっかりと握ります。そしてその次が左手の薬指で、その次が中指というように、10から9、8、7と弱めていって最後の1が右手の親指になるという力の入れ具合です。というのは、左手の小指に力を入れると、アドレスでハンドダウンになりやすく、コックができやすくなります。またトップからダウンスイングしたときにグリップを引きつけやすく、ためもできます。レイトヒットできるのです。

その逆に右手の親指に一番力が入っていては、アドレスでハンドアップしやすく、トップからは外からクラブを振り下ろすアウトサイドインのスイングになりやすいのです。また右手が邪魔をして左手が軸となるスイングができにくくなるということがあります。

──グリップの力加減がスイング軌道まで決めるなんて。確かにホーガンが言うようにグリップがスイングを決めるのですね。

中部 グリップの形としては右手の人さし指はピストルの引き金を引くようにして締めたほうがいいですね。しっかりとしたショットが打てると思います。またグリップエンドを包むように長く握るのは感心しません。左手のパームが収まるぐらい、グリップエンドが少し見えるくらいがいいと思います。

アドレスでのグリップの力加減は左手7分、右手3分。右手の人差指はピストルの引き金を引くように締める。こうして左手主体でスイングする

アドレスでのグリップの力加減は左手7分、右手3分。右手の人差指はピストルの引き金を引くように締める。こうして左手主体でスイングする

──中部さんはグリップを見ただけでその人の球筋やハンディキャップはもちろん、性格や運勢まで当てていましたよね。天国でもそんなことをやっているのですか?

中部 うん。ここにも新橋の「独楽(こま)」(現在閉店)みたいないい小料理屋があってね、杉山通敬さんたちと毎晩飲んでます。その店に来る客がいろいろとゴルフの質問をするから、まずはグリップを見せなさいってね。だって、その人の実力がわからないと、なんて答えていいかわからないでしょう。

(文:本條強、イラスト:吉田郁也、協力:中部隆、参考:「中部銀次郎 悟りのゴルフ」)

 なかべ・ぎんじろう 1942年2月16日、山口県下関市生まれ。2001年12月14日逝去。10歳のときに父の手ほどきでゴルフを始め、高校時代からゴルフ界で頭角を現し、甲南大学時代の62年に日本アマチュア選手権で初優勝。以来、64、66、67、74、78年と計6度の優勝を成し遂げる。
「書斎のゴルフ」公式ホームページはこちら。http://syosainogolf.com/index.html

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