訪日客、強まる中国頼み 「コト消費」に課題多く

2020/1/18 23:00
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訪日客における中国の存在感が高まっている。2019年の中国客数は959万人と全体の3割を占め、消費に占めるシェアは4割近くになった。消費意欲の高い中国人の伸びは日本経済への恩恵も大きいが、中身は若い女性を中心とした買い物に偏る。日本の良さを体験してもらう「コト消費」が伸びなければ、東京五輪後の持続力に不安が出る。

「きれいな景色の温泉に入ったり、かわいい日本の浴衣を着たりしたい」。上海の女性会社員の黄さん(26)は今年の春節休暇で秋田県の乳頭温泉に行く予定だ。中国で人気の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿されていた動画を見て決めた。

足元の訪日客の伸びが中国の若い女性に支えられている。19年の中国客は前年比14.5%増の約959万人。18年の調査では全体の4割強が20~39歳の女性だった。

19年の消費額を見ると、中国人は1人あたり約21万3千円と、全世界の平均より約5万5千円多い。特に買い物に使うお金は約10万9千円と、平均の2倍だ。いわゆる「爆買い」は落ち着いたとされるが、存在感は大きい。

だが、中国人の存在感が高まれば高まるほど、課題も浮かぶ。上海の黄さんとは異なり、中国客は買い物を主な目的として日本を訪れる人が多い。結果として都市部に集中し、地方への誘客につながりにくい。

観光地としての魅力を伝えるには体験型を意味する「コト消費」が焦点だが、現状は心もとない。訪日消費に占める「娯楽サービス費」の割合は19年に3.9%。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は12%(16年)と、日本とは3倍の格差がある。

企業はアピールに躍起だ。JTBは訪日客向けのオプショナルツアーで、ハイヤーを貸し切って観光地を回れる商品を増やす。現代アートや夜遊びなどを幅広く体験できるようにする。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は東京五輪開催前の夏ごろに新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」を開き、任天堂の人気キャラクター「マリオ」をテーマに集客を見込む。

夏に開かれる東京五輪までは、訪日客も着実な伸びが見込まれる。問題は五輪後の持続力だ。イベントや買い物だけに頼るのではなく、観光地としての魅力を感じてもらえなければ、訪日客も鈍りかねない。

訪日客の伸びを特定の国・地域に頼ることへの危うさもある。19年は韓国からの訪日客が約558万人と、前年に比べて26%減った。日韓関係の悪化を受け、韓国では日本製品の購入や日本への旅行を控える「日本不買」が続く。1月下旬の旧正月も訪日客の回復は見込みにくい。

航空会社は韓国と日本を結ぶ路線を相次ぎ縮小した。韓国の航空会社8社によると、6月に週750便(往復)あった日本便の運航本数は12月に3割減の500便程度に落ち込んだ。韓国人に人気の九州地域を中心にホテルを展開する西日本鉄道は韓国人宿泊客数が7割減の状態だ。

訪日客は韓国を除けば、中国や東南アジア、欧米などが軒並み前年を上回っている。だが、過去には日中関係が冷え込み、中国からの訪日客が急減したことがある。

観光地としての日本の魅力を海外に伝え、欧米や東南アジアから長期の滞在を呼び込む。20年に4千万人という訪日客数の目標達成が難しくなる一方で、人数ではなく質を重視した訪日客の取り込みが求められている。

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