財政健全化の議論、空疎に 内閣府試算は増税でも悪化
内閣府は17日の経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支(PB)が2025年度に3.6兆円程度の赤字になるとの試算を示した。19年10月に消費税率を引き上げても財政の悪化が続き、目標とする25年度のPB黒字化は一段と遠のいた。世界的にも景気下支えのため財政出動圧力が強まるなか、財政健全化に向けた議論は停滞している。

今回の試算では政策効果を最大に見込んだ「成長実現」ケースでも、25年度のPBの赤字幅は昨年7月時点の見通し(2.3兆円)から拡大する。海外経済が減速し、足元で税収の伸びが鈍化していることが大きい。
成長実現のケースでは経済成長率を20年代前半に名目で3%超、実質で2%と見込んでいる。日本経済の現状に比べ強気な前提のもとでの試算でも、黒字化を達成するのは27年度となる。
西村康稔経済財政・再生相は17日の記者会見で「今後の着実な歳出改革で25年度のPB黒字化も視野に入る。むちゃくちゃな数字ではない」と説明したが、カギとなる社会保障制度改革の歩みは遅い。
政府が昨年立ち上げた全世代型社会保障検討会議も「財政のための議論はしない」と予防線を張っている。昨年末の中間報告では大幅な歳出減につながる方向性を打ち出せなかった。
PB黒字化の目標時期は当初20年度だったが、18年夏に25年度への先送りを決めた。19年度から21年度を「基盤強化期間」と位置づけ、社会保障を中心に歳出・歳入改革を進めるとした。
20年度はこの計画の真ん中の年にあたる。政府は今夏に全世代型会議の結果なども踏まえて社会保障改革に一定の方向性を出す考えだ。衆院解散・総選挙の可能性などもにらんで踏み込み不足に終われば、目標達成時期の延期は避けられない。
大和総研の神田慶司氏は「黒字化の実現には歳出・歳入改革と同時に、そもそもの成長力を高める改革を進めていく必要がある」と指摘する。
日本は昨年12月に、五輪後の景気の下振れリスクを見据え、国・地方で13.2兆円を支出する大型の経済対策をまとめた。教育や研究開発など成長につながる分野に予算を重点的に配分し、成長と財政健全化を両立する現実的な道筋を示していく必要がある。