身体×映像 融合の先駆 京都賞のジョーン・ジョナス個展
文化の風

2020/1/17 2:01
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「Reanimation」の一幕(京都市のロームシアター京都)=井上 嘉和撮影

「Reanimation」の一幕(京都市のロームシアター京都)=井上 嘉和撮影

身体パフォーマンスと映像を組み合わせた芸術表現の先駆の一人として半世紀にわたり活動する女性アーティスト、ジョーン・ジョナス。2018年の京都賞受賞を記念して昨年末に京都市で公演を開いたほか、個展も同市で開催中だ。多彩な表現手法で多様なテーマを扱ってきた。そのキャリアを概観する本格的な展覧会は国内で初めてだ。

昨年12月、ロームシアター京都(京都市)でのパフォーマンス公演「Reanimation」。白い紙のコート姿で登場したジョナスがアイスランドのノーベル賞作家、ハルドル・ラクスネス「極北の秘教」の一節を読み上げる。断片的な言葉で、自然と人間の関係を巡る思索を連ねていく。舞台を移動しながら、時にスクリーン前で映像と一体になり、時に黒板に雪の結晶を描く。

地吹雪、氷河、高原の建物。舞台中央のスクリーンには北欧の風景が流れる。その輪郭をなぞりながら次々落書きのようにリアルタイムで描くドローイングがスクリーン上の映像に重ね合わされると、「蘇生」を意味する公演タイトルそのままに映像がより生々しく新たなイメージとして立ち上がってくるよう。

絵や音楽も投入

メッセージは明示されないが、人工物と対比される荘厳な自然、融解する氷河を想起させるシーンは環境破壊への言及だろうか。

ジョナスは参照元のテキストを精緻に分析しイメージとして観客に伝えることを重視する。全編にわたって伴奏したジャズピアニストのジェイソン・モランによる音楽は即興のようでいて緻密に共作されており、ジョナスの生んだ視覚イメージをより立体的な形で観客に投げかけた。

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)で開催中の個展は「Reanimation」のインスタレーション版など4作品を展示。フェミニズムなど女性の主体の問題を扱った1970年代の初期作から海洋環境をテーマにした昨年の作品までの歩みをたどる。

ジョナスを「現代美術における女性アーティストのパイオニア的存在」と位置づけるのは美術家・彫刻家の金氏徹平。「彫刻は大きく、重く、男性的な側面が強いため、建築や都市などと結びついて発展してきた。対してジョナスはローカルな文化や物語、落書きのようなドローイングといった小さな出来事を拡張させて抵抗する新しいアプローチを提示した」と評する。

能の仮面に着想

例えば、今回の個展で展示されている映像「Organic Honey」など多くの作品に登場する仮面のモチーフは70年代に日本を訪れた際、「テキストをベースにした西洋のリアリズムとは異なる詩的な動きに強い影響を受けた」(ジョナス)と話す能を取り入れたもの。仮面をかぶり、架空の女性を演じることで既存の女性像への疑問を呈する。その狙いを実現する手法として能というローカルな文化や当時新しかった映像を「現代美術のフィールドでパフォーマンスとして用いるパイオニアにもなった」(金氏)。

西洋と東洋、ジェンダー、個人と環境など「あらゆる関係がめまぐるしく変化していく」現在の世界。こうしたテーマをキャリア初期から扱ってきたジョナス作品の「新たな評価が可能になっているのではないか」とも金氏はみる。

ファインアートの展示空間でのパフォーマンス上演は今や珍しくない。逆に演劇やダンスが映像表現や美術作家を起用する事例、領域を横断した作品も当たり前になった。ジョナス作品は「(初期作も)強度を失わず、現行のファインアートの延長に違和感なく位置づけられる。だからこそ、多くの若い人たちに見てほしい」とチーフキュレーターの藤田瑞穂は言う。個展は2月2日まで。

(佐藤洋輔)

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