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箱根駅伝に考える スポーツの価値、生かせない日本
ドーム社長 安田秀一

Tokyo2020
(1/3ページ)
2020/1/30 5:30
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創設から100周年の箱根駅伝。人気は高いが、運営は任意団体だ=共同

創設から100周年の箱根駅伝。人気は高いが、運営は任意団体だ=共同

正月休み、テレビで箱根駅伝を見た人は多いのではないでしょうか。創設から100周年、すっかり風物詩となっています。今年は区間新記録が相次ぎ、総合優勝した青山学院大学は大会新記録を樹立しました。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏は、その盛り上がりにスポーツのパワーを改めて感じたと話します。ただ米国のスポーツビジネスや学生スポーツに詳しい同氏は、日本ではスポーツの価値が十分に活用されていないと指摘します。

◇   ◇   ◇

今年のお正月も箱根駅伝で大いに盛り上がりました。関東の大学生のスポーツイベントがこれだけ日本中の注目を集め、熱狂させるということに、改めてスポーツの持つ価値やパワーの大きさを認識しました。

一方で、主催する関東学生陸上競技連盟(関東学連)や関連する企業が大きな利益を得ているのではないか、そんな声もSNS(交流サイト)を中心に上がってきています。関係者や箱根駅伝のOBたちから、主役である学生や大学に収益が還元されていない、どこに行っているのか分からないという声も上がっています。補助員などで無報酬で半ば強制的に箱根駅伝の運営に参加させられる学生がいる一方、収益をあげている企業や組織がある。これはどう考えてもフェアではありません。今回は箱根駅伝を入り口に日本の学生スポーツのあり方、さらに、この国でスポーツの価値が向上しきらない理由について論じてみます。

■120年前の米国の状況と似ている

結論から申し上げれば「不満があるなら、大学が体育会を大学の組織に組み込み、大学が主催者となる新しいレースを作ること」が、その本質的な解決策だと思っています。箱根駅伝の盛り上がりを見ていて、僕がつくづく感じるのは「120年ほど前の米国の状況とよく似ているのだろうなあ」ということです。約120年前とは、全米大学体育協会(NCAA)が設立された当時のことです。

米国の大学スポーツも最初は自発的な学生たちのクラブチームの対抗戦から始まりました。東部の名門大学などでアメリカンフットボール、ボート、陸上競技などが人気を集めていました。その中で、もっとも人気のあったアメリカンフットボールの試合において、死亡事故や重篤なケガなどの事故が続発したことが問題にされ始めました。また、ボートや陸上競技などでもスポンサーシップなどの財務に関するルールがなかったり、選手の出場資格も不明瞭だったり、と競争自体が不当や過当になっていき、ますます問題が大きくなっていきました。そこで大学はまず、安全で公正な環境を整備するために、クラブチームではなく、大学自らが責任を持ってチームを所有・管理する、という決断をしました。

全ては「大学スポーツの盛り上がり」がその要因であり、学生はもちろん、教職員やOBOGたちも学生アスリートたちの躍動に熱狂していたという背景があります。同時に、スポーツを通じて成長を遂げる学生たちを目の当たりにして、教育的な価値も見いだしていた大学は、「アスレチックデパートメント」という部署を設けて、その傘下にチームを加えることにしました。アスレチックデパートメントは適切な日本語訳がありませんので、ここでは「競技統括部」と名付けますが、まずはそのような形で大学内に正式な組織をつくり、人事や金銭管理、安全管理も大学が責任を持つようになりました。

それでもなお、大学スポーツの人気は右肩上がりを続け、それと比例するように過当な競争は収まらず、大きな社会問題にも発展してしまいました。そんな背景から、ハーバード大学などいくつかの大学が大学スポーツを禁止するという動きにも出ましたが、教育的価値を含めて大学スポーツの大ファンだった当時のセオドア・ルーズベルト大統領が各大学の学長を集めて「お互いに守るべきルールを作る」ことを促しました。これがNCAAのスタートです。

箱根駅伝も当時の状況に酷似していると思います。

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