楽観できない令和の歌舞伎 東京4座の新春公演から

アートレビュー
2020/1/23 2:00
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新元号の正月を迎えた歌舞伎は東京だけでも歌舞伎座、国立劇場、新橋演舞場、浅草公会堂の4座で興行が行われ、盛況が続いているかに見える。だがその現状は外から見るほど楽観できるものではない。今月の東京4座の舞台は、現在の歌舞伎の縮図のようでもある。

歌舞伎座は白鸚と吉右衛門の大御所2人が健在で、2人の舞台を見ている限り、歌舞伎の新年は歌舞伎座で明けるという揺るがぬ思いを再確認することができる。だが2人とも80歳の声を聞くのも遠いことではない。国立劇場の菊五郎にしても同じで、例年菊五郎劇団の出演で肩の凝らない演目でくつろぐこの劇場の正月だが、今年の「菊一座令和仇討(きくいちざれいわのあだうち)」は脚本の出来もよく、菊之助と松緑がしっかり脇を固める体制も整って楽しめる。だが、この一座の誇る脇役陣は、御大菊五郎と半世紀来、支え支えられつつ築き上げてきたものだ。やがて来る菊之助らが中心となる時代に、いまと同レベルの陣が敷けるかどうか? これはじつは、菊五郎劇団だけの話ではない。

新橋演舞場の正月はこの数年海老蔵のワンマン体制の一座だが、前売りが即日完売と聞く人気の実態は海老蔵よりむしろ長男の勸玄にあるらしく、客席は応援団ともいうべき観客でほぼ埋め尽くされている。團十郎襲名を控え海老蔵の名では最後となる今年はやや古典の演目が増えたとはいえ、舞台はといえば「め組の喧嘩(けんか)」に梅玉が出ていることで面目を保っているともいえる。

そうした中で明るい兆しは40周年を迎えた浅草公会堂の花形歌舞伎で、松也ら若手たちが「寺子屋」「絵本太功記」「仮名手本忠臣蔵・七段目」といった、歌舞伎の古典の基幹部分というべき丸本時代物の大作に取り組んで相当の成績を示したことだろう。

(演劇評論家 上村 以和於)

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