直木賞の川越宗一氏「現代に通じる歴史小説を」

2020/1/16 14:49
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次作は台湾の歴史的英雄、鄭成功の活躍を題材にした作品を構想中という川越宗一氏(15日、東京都千代田区)

次作は台湾の歴史的英雄、鄭成功の活躍を題材にした作品を構想中という川越宗一氏(15日、東京都千代田区)

明治期の樺太(サハリン)を舞台に、日露の辺境政策に翻弄されながらも雄々しく生きる樺太出身のアイヌの人々を描いた「熱源」(文芸春秋)で直木賞の受賞が決まった。言語学者の金田一京助、ポーランドの民族学者ピウスツキら実在の人物が登場する、骨太の歴史小説だ。

自身は関西人だが、北海道のアイヌ民族博物館を訪れた際に見たピウスツキの銅像から物語を着想した。「文化が交流したり反発したりしながら混ざり合うさまを眺めるのが楽しい」。異文化がせめぎ合うダイナミズムへの関心が創作の根底にある。

受賞作のテーマの一つとなっているのが「文明」側の人間の身勝手さだ。樺太に生まれた主人公ヤヨマネクフらは強制移住や弾圧の苦難に直面する。「人間には自己決定権という自由があると思う。アイヌの人たちを書いたつもりはなく、個人を書いた」

選考委員が高く評価したのは、読み込んだ資料を作品に生かす手腕だった。だが本人は「資料に出てくる実在の人物は都合よく動かない」と歴史小説を書く苦労を語る。「史実を物語で『正しく』伝えるのは難しい。歴史小説は現代に通じなければならない。いま自分が生きる世界を考えられる作品を面白く書きたい」

松本清張賞を受賞することになるデビュー作で一度落選を経験している。「その時に、このままでは自分が読者として読みたいものが一生世に出ないと思った」。その強い思いが、2作目での直木賞受賞という栄誉を引き寄せた。「執筆時間のほとんどはしんどいけれど、その先にある快感は書かなければ得られない」。今は台湾の歴史的英雄、鄭成功の活躍を題材にした作品を構想中だ。

(村上由樹)

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