ロシア内閣総辞職 メドベージェフ氏退任へ
「プーチン院政」へ体制移行が始動

ヨーロッパ
2020/1/16 0:47 (2020/1/16 4:49更新)
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【モスクワ=石川陽平】ロシアのメドベージェフ首相は15日、内閣が総辞職すると表明した。プーチン大統領が同日の年次教書演説で提案した政治機構の改革に向けた憲法改正や、貧困の減少など新たな経済政策の実現を急ぐため、自ら退任して政府を刷新する。プーチン氏が2024年に大統領を退いた後も実権を維持する「院政」に向けて、ロシアの体制移行が始まった。

内閣の総辞職は、プーチン大統領が15日にモスクワで年次教書演説を行った直後に公表された。メドベージェフ氏はテレビで映し出されたプーチン氏と閣僚との会合で「(憲法改正のために)必要なすべての決定を、わが国の大統領が下せるようにする」と総辞職の理由を説明した。

後任首相には連邦税務局のミハイル・ミシュスチン長官(53)が就く見通し。同日の内閣総辞職後にプーチン大統領が人事案を下院に提案した。下院の同意を得て、正式に任命する。

タス通信によると、下院は16日に新首相の人事を協議する。一両日中に下院が同意し新首相が誕生する可能性がある。メドベージェフ氏も含めた全閣僚は、新政府の発足まで職務を続ける。

プーチン大統領が新首相に提案したミシュスチン税務局長官=ロイター

プーチン大統領が新首相に提案したミシュスチン税務局長官=ロイター


一方、プーチン大統領は首相を退任するメドベージェフ氏に対し、国防など様々な安全保障問題を協議し、基本方針を決める安全保障会議に新設する副議長のポストを提案すると明らかにした。安保会議の議長は大統領で、メドベージェフ氏は今後もプーチン政権の主要な幹部の一人として残ることになる。

メドベージェフ内閣の総辞職で、24年のプーチン大統領の退任に伴う体制移行が実質的にスタートしたのは確実だ。

プーチン氏は15日の年次教書演説で「政治システムを大幅に改革する」と表明し、議会の権限強化に向けた憲法改正を提案した。首相と閣僚の人事権を大統領から下院に移すとの内容だ。プーチン氏が下院議長として、政府の人事権を握り、最高権力者の地位にとどまるシナリオが取り沙汰されている。

もう一つの重要な憲法改正案は、地方知事らで構成し国家の基本方針を話し合う国家評議会の制度化だ。国家評議会は現在は大統領の諮問機関だが、改憲後は国のあらゆる分野の基本方針を協議する強力な国家機関になる可能性があり、プーチン氏が率いることも選択肢になりそうだ。

さらにプーチン氏は年次教書演説で大統領任期を「連続2期」までとしている憲法の規定から「連続」を削除することも示唆した。自らが24年にいったん大統領職を退いた後、再び復帰する可能性を排除した発言だが、プーチン氏に代わって長期政権を築く新たな権力者が現れることを阻む狙いもありそうだ。

プーチン氏が内閣総辞職を決めた背景には、メドベージェフ氏と同氏が党首を務める与党・統一ロシアの支持率が30%台に長期低迷していることもあるとみられる。国民に不評なメドベージェフ氏の政府を刷新して、プーチン政権の基盤強化につなげ、24年の円滑な体制移行につなげる思惑が見える。

実際にプーチン大統領には国民に広がる不満への焦りも見えた。15日の年次教書演説ではまず、人口減少への対策や貧困率の低下など、国民生活の改善に焦点が当てられていた。投資環境の改善も約束した。

19年には反体制派野党が呼びかけたプーチン政権への抗議デモが近年では最大規模まで膨らんだ経緯がある。このまま有権者の不満を放置すれば、政権を揺さぶりかねないとの判断もあったもようだ。

プーチン氏が2000年に大統領に就任してから20年が経過する。24年には任期満了を迎え、2期連続を超えて再選されることを禁じる憲法の規定を守り、退任すると繰り返し表明してきた。

ただ、ロシアでは退任後もプーチン氏が実権を維持するとの見方が大半を占めてきた。国家の安定を維持するには、なお国民の強い支持があるプーチン氏を必要としているだけでなく、利権構造が同氏を中心に形成されているためだ。憲法改正の提案と内閣総辞職の同時発表がその「院政」への布石になる。

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