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チベットの映画監督が描く「普遍的な人間性」

チベットの監督による映画が最近、日本でも上映されるようになってきた。中国青海省の海南チベット族自治州で生まれ育ったソンタルジャ監督(46)は、先駆けのひとりだ。世界的に知られるペマ・ツェテン監督に続くチベット映画人第1世代の主要メンバーであり、長編2作目の「草原の河」はチベットの映画監督作品として2017年に初めて日本で劇場公開された。

そんなソンタルジャ監督の新作が再び日本でお目見えする。「巡礼の約束」(東京・神保町の岩波ホールで2月8日から公開)は、聖地ラサへ向かう家族の物語だ。主人公一家はチベットの中でも独自の文化を持つギャロン地域の人々という設定。ギャロン出身の有名歌手ヨンジョンジャが「故郷の人々のこころを伝えたい」との思いから映画を企画し、チベットを代表する作家タシダワとソンタルジャ監督が脚本を共同執筆した。

「同じチベット文化圏でも私の故郷のアムドは遊牧民の地域だが、ギャロンは農耕民族。脚本を練り上げるためにギャロンを訪ねたが、独特の方言と石造りの家屋といった現地の文化に感銘を受けた」と監督は語る。ひそかに企画者であるヨンジョンジャを主人公一家の夫役に想定して脚本を書き、「夫役を演じてほしい。あなたならできる、と説得して実現させたんだ」と監督は笑みをみせる。

ソンタルジャ監督

物語は、妻がラサへ巡礼の旅に出ると突然言い出して始まる。最も丁寧で功徳を積むとされる五体投地と呼ばれる礼拝をしながらラサを目指す妻を夫が追いかけ、さらに妻と前夫の子である息子も、母を亡くした子ロバを伴いラサへと向かう。五体投地のほか、死者の肉体を鳥に与えて布施とする鳥葬などチベットならではの光景が登場するが、監督によると「これらを取り入れたのはあくまでも日常的なものであるから」で、「チベットといえば雄大な景色といった紋切り型の描写を排除した。私が描きたいのは人間そのもの。夫は妻の前夫に嫉妬するが、そんな普遍的な人間性を描きたいと思った」と語る。

一方で監督は「チベットには映画になるような面白いテーマがたくさんある」とも感じているという。監督は教師だった父からチベットの仏教画「タンカ」を教わり、美術家を経て北京電影学院撮影科で学んだ経歴を持つ。「さまざまな挑戦をしたい」と言い、漢民族の家族の物語を映画化する予定もあるという。

(関原のり子)

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