米、中国と「第1段階の合意」署名へ 農産物輸出を5割増

貿易摩擦
2020/1/15 21:03
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【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式に文書に署名する。合意内容は7項目に及ぶ。トランプ米大統領は農産物輸出の大幅増を最優先した。11月の大統領選を前に支持基盤の中西部をてこ入れする狙いだが、中国には数値目標のハードルが高い。米政権は「合意が守られなければ関税を再発動する」としており、貿易戦争の終結は見えてこない。

米中両国はホワイトハウスで署名式を開く。米国はトランプ大統領らが参加し、中国側も13日に現地入りした劉鶴(リュウ・ハァ)副首相が出席する。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は署名に合わせて合意文書を公表する考え。米政権幹部によると合意文書は86ページ程度で150ページまで積み上げながら決裂した2019年5月時点に比べ、内容は薄くなった。

トランプ米大統領がこだわったのが、米国産農産品の対中輸出の拡大だ。中国は米国産の農畜産品の輸入を年400億ドル程度に増やす。対中輸出は過去最大だった12年でも260億ドルにすぎず、実現すれば供給量は約1.5倍になる。トランプ氏の支持基盤である中西部は貿易戦争で農業、製造業とも生産が弱含んでいた。

中国の米国産大豆の輸入額は19年1~11月が前年同期比22%減ったが、単月では7月から11月まで5カ月連続のプラスだ。米国産大豆は秋に収穫するので、例年なら中国は晩秋から冬に輸入を増やす。米に配慮した季節外れの輸入拡大で割を食ったのがブラジル産の大豆だ。

ブラジル産大豆は北半球の春に収穫し、中国は晩春から夏にかけて輸入が増える。この時期に米国産と競合したため、ブラジル産大豆の輸入は19年1~11月に22%減り、18年の前年比4割増から減少に転じた。アフリカ豚コレラ(ASF)のまん延で豚の飼育頭数が減り、大豆の需要が落ちたことなども背景にあるが、米国産との競合が響いた可能性がある。

一方、ASFの影響で豚肉が高騰したため、豚肉やその代替の牛肉の輸入は急増している。牛豚肉の輸入額は19年1~11月に109億ドルと過去最高になった。中国は目標達成と国内物価安定という「一石二鳥」を狙い、鶏肉も含めて米国産の肉類を大量購入しそうだ。

USTRによると、米中両国が合意したのは(1)知的財産権の保護(2)技術移転(3)農業市場の開放(4)金融サービス――など7項目に及ぶ。中国に進出する米企業は、中国側が働きかける技術移転を嫌ってきた。「第1段階の合意」は技術移転の強要の制限も盛り込むが、法的措置など具体的な手順は「第2段階の交渉に持ち越される」(米政権幹部)。中国は1月に技術移転の強要禁止を盛った新法を施行したばかりで、合意が新味のある内容になる公算は小さい。

両国が合意文書に署名するのは18年7月に関税合戦が勃発して以降で初めてだ。米国側は「第1段階の合意」を受けて、2月中旬をメドに19年9月に発動した制裁関税第4弾(約1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる。

米政権は18年7月以降に発動した「関税第1~3弾(2500億ドル分)」の引き下げは見送っており、米中交渉が再び停滞すれば「終戦」はみえなくなる。

米政権は国有銀行を通じてハイテク産業に低利融資するなど中国の補助金政策を「世界貿易機関(WTO)ルール違反だ」と批判してきた。ただ「第1段階の合意」ではトランプ氏が輸出拡大の成果を急いだため、中国の構造問題は先送りとなった。交渉の経緯を知る中国側の関係者は「中国の譲歩ばかり指摘されるが、構造問題を先送りしたのは米国の譲歩だ」と語る。

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