財政健全化 遠のく日本 25年度の赤字、税収減で拡大 - 日本経済新聞
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財政健全化 遠のく日本 25年度の赤字、税収減で拡大

内閣府は17日の経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支(PB)が2025年度に3.6兆円程度の赤字になるとの試算を示す。政府は25年度の黒字化を目指すが、世界経済の減速で足元の税収が減ることなどから、赤字幅は19年7月時点の見通し(2.3兆円)より拡大する。社会保障費の膨張などにより先進国の間で遅れが目立っていた日本の財政健全化は、さらに遠のく。

内閣府は毎年1月と7月に中長期の財政見通しをまとめる。試算は生産性の向上などの政策効果を見込んだ「成長実現」と、成長率を比較的慎重に見積もる「ベースライン」の2ケースを示す。

成長実現ケースは経済成長率が20年代前半に名目で3%、物価変動の影響を除く実質で2%に達する前提を置く。イノベーションによる生産性の大幅な改善などを当て込んでおり、民間エコノミストの予測に比べるとかなり楽観的な想定になっている。

政府が期待するような高成長は過去を振り返っても実現性に乏しく、甘い試算は下方修正につながることが多い。足元でも米中貿易戦争などの影響で企業業績にブレーキがかかり、税収が減少傾向にある。

20年度の国の税収見通しは半年前の19年7月時点の試算で65.6兆円としていたのが、20年度当初予算案では63.5兆円に減った。18年度の詳細な決算や20年度予算案での歳出改革を織り込んでも、25年度の赤字幅の拡大は避けられない見通しだ。

基礎的財政収支を25年度に黒字化する財政健全化目標の達成は一段と難しくなりつつある。今回の試算では、黒字化の時期は半年前の試算と同じ27年度で変わらない。ただ27年度の黒字幅は半年前の1.6兆円から0.3兆円程度まで縮小し、黒字化がさらに後にずれる懸念が強まっている。成長率などをより慎重に見込むベースラインケースでは、試算期間中の29年度までに黒字化は達成できない。

政府は19年10月に消費税率を8%から10%に引き上げたが、当初の予定から4年遅れた。食品への軽減税率の導入などの家計支援策も用意した分、財政再建は遠のいた。さらに当面の景気浮揚のため国・地方で13.2兆円を支出する経済対策も19年12月にまとめた。

歳出面では、高齢化で膨張する年金や医療・介護などの社会保障費の抑制も欠かせない。政府は「全世代型社会保障」をテーマに掲げ、改革の議論を進めているが、負担と給付のバランスの抜本的な見直しには踏み込めていない。

日本は国内総生産(GDP)比の債務残高が240%近くあり先進国で最悪の水準にある。主要7カ国(G7)をみてもイタリアと米国が100%を上回っているが、英国やカナダは80%台でドイツは60%程度だ。財政収支も黒字を堅持するドイツなどとは開きがあり、GDP比の赤字幅はイタリアやフランス、カナダなどより大きい。

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