米がイラク制裁示唆 米軍撤収要求で 米紙報道

中東・アフリカ
2020/1/15 18:33
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【カイロ=飛田雅則】イラクのアブドルマハディ暫定首相が米国に対し、イラク駐留米軍の撤収を求めたことで、米側が制裁を検討し始めた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)などが14日までに報じた。年2億5000万ドル(約274億円)の軍事支援の停止や、イラク政府が米国に持つドル口座の凍結を検討している。イラクの安全保障や経済再建に打撃となる可能性がある。

イラクでは米ドルも広く流通している(バグダッドでドル札を数える両替商、2015年12月)=ロイター

報道によると、米側は、いずれも米軍駐留の根拠となっている2国間の取り決めをイラクが破棄すれば踏み切る構えだ。軍事支援の削減は、米国の2020会計年度予算で計上された2億5000万ドルのイラク軍事支援の全額だとみられている。

アブドルマハディ氏らイラクの有力政治家、議会多数派はイスラム教シーア派勢力だ。同派が掌握する隣国イランの指導部の意向を受け入れやすい。イランと対立する米国は約5000人のイラク駐留米軍を通じ、イランに圧力をかけている。

米報道によると、米政府はイラク政府がニューヨーク連銀に持つドル口座の凍結も検討する。石油輸出の代金が大半で、企業との決済など必要な際にドル建てで引き出してきた。

仮に米国が軍事支援を停止すればイラク軍の弱体化につながる。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦などには打撃となる。ドル資金を引き出せなくなると、イラク経済が混乱する可能性がある。イラク通貨はイラクディナールだが、米ドルも企業決済や日常生活で広く流通する。イラクディナールよりドルの方が一般に信用力が高い。需要も多い。

米国は15年、イラク政府が米国に保有する口座から、米国外への送金を一時停止した。差し止められた資金は数十億ドル規模だとみられる。ドル資金がイラクを通じてイランの金融機関に渡り、核開発に使われたりテロ組織に流れたりするリスクがあると判断した。その際はイラクでドル資金が不足し、企業活動や市民生活が大きく混乱した。

米軍のイラク駐留の根拠は、イラク政府の要請に基づく同国と米国の間の取り決めだ。これをイラクが見直せば、米軍はイラク駐留の正当性を失いかねない。米軍はIS掃討を名目に駐留するが、実際には敵対するイランを国境を越えて監視する任務もあるとみられている。エスパー米国防長官らは撤収を検討していないと説明している。

米国は1月初め、イラク領内で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊の司令官を殺害した。この作戦を、5日に緊急招集されたイラク議会は主権侵害とみなし、米軍を含むすべての駐留外国軍の撤収を求める決議を採択。これを受け、アブドルマハディ氏がポンペオ米国務長官らに「撤収への協力」を求めた。トランプ大統領は「出て行けというなら前代未聞の経済制裁を科す」と警告していた。

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