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日本馬3勝の快挙 感動と安堵の香港国際競走

毎年12月に行われる香港国際競走。昨年後半、香港では「逃亡犯条例」改正案への反発に端を発したデモが過激化しました。民主派のデモ隊と警察との衝突や空港の占拠などが報じられ、香港国際競走の開催にも影響があるのではないか、と懸念されました。

香港の2つの競馬場のうち、市街地に近いハッピーバレー競馬場はデモの影響で、2019年9月と11月の2度、レースが中止に。一方、国際競走が行われるシャティン競馬場は、近隣の香港中文大学で衝突があったものの、当初のスケジュール通り開催されていました。

香港国際競走当日のスタンド。デモの影響のためか、例年より観衆が少なかった

今回出走する日本馬は例年になく豪華な布陣。アーモンドアイ、ラヴズオンリーユーの回避は残念でしたが、それでも4つの国際競走にG1馬7頭を含む9頭が参戦し、活躍を期待されていました。筆者個人も楽しみにしていて、なんとか無事に開催されてほしいと願っていました。

香港入りはレース2日前。普段なら満席に近いはずの航空便に空席があり、行列ができるのが常だった入国審査も拍子抜けするほどスムーズ。空港の到着ロビーも人が少なく、観光客の減少を肌で感じました。ただ、市街地は至って平常で、何事もなくレース当日を迎えられました。

香港ヴァーズ(芝2400メートル)

グローリーヴェイズが馬場の内を鮮やかに突き抜けてG1初制覇。レース後、尾関知人調教師は「強豪ぞろいだったが、ジョアン・モレイラ騎手の手腕に応えて頑張ってくれればいいレースができると思っていた。びっくりするくらい強かった」と振り返っていました。2着ラッキーライラック、4着ディアドラと3頭出走の日本馬が上位を占める結果になりました。

香港スプリント(芝1200メートル)

例年、地元香港馬が強さを見せるレース。日本から唯一、参戦したダノンスマッシュは、このレースを制したただ一頭の日本馬ロードカナロアの産駒ということで現地でも注目されていましたが、結果は8着。厚い壁に跳ね返された格好で、これを糧に今後のさらなる活躍に期待したいところです。勝ったのは地元のビートザクロックでした。

香港マイル(芝1600メートル)

日本からインディチャンプ、ノームコア、アドマイヤマーズ、ペルシアンナイトと4頭の1600メートルG1勝ち馬が出走し、3歳馬アドマイヤマーズが地元の強豪ビューティージェネレーションなどを退けて見事に優勝! 香港マイルがG1に昇格した00年以降、3歳馬の勝利は史上初の快挙です。レース3週前(11月17日)に亡くなった近藤利一オーナーにささげる弔いの勝利となりました。近藤オーナーが仕立てたスーツを着て臨んだ友道康夫調教師がレース後に涙するシーンが、競馬場内のビジョンに大写しに。実況しながらもらい泣きしそうになるほどの感動的な場面でした。

香港カップ(芝2000メートル)

春に香港でクイーンエリザベス2世カップ(G1)を制したウインブライトが出走。前日の調教後、畠山吉宏調教師は「調整は予定通り。秋の2戦よりも状態は明らかに上がっている。コース適性も高いし、春の再現となってくれれば」と手応えを語っていました。

畠山調教師の言葉通り、ウインブライトはアイルランドの牝馬マジックワンドに競り勝ち、香港で2度目のG1制覇。ゴール前の競り合いは実況していてしびれました。表彰式では多くの日本人ファンが歓声を上げ、松岡正海騎手が誇らしげな表情でトロフィーを掲げたのがとても印象的でした。

香港カップをウインブライトで制し、喜ぶ松岡騎手

香港国際競走で日本馬が3勝するのは01年以来18年ぶり。幸運にも、歴史的な一日に立ち会うことができました。そして何よりも、無事に開催が行われたことに安堵しました。

国際競走当日は香港で一連のデモが始まってから半年の節目に当たり、大規模なデモが呼びかけられました。報道陣の滞在先や競馬場はデモの直接的な影響はなくとも、移動に支障があるのではと懸念されていました。しかし、シャトルバスの移動ルートの変更などによりほとんど影響はなく、この点を含めスムーズな競馬開催には現地主催者による細心の配慮が感じられました。

この日、香港の馬券の売り上げは過去最高を記録した一方で、シャティン競馬場の入場人員は前年の国際競走当日と比べて7割も落ちていました。確かに、これまでは人混みをかき分けなければ場内を移動できませんでしたが、この日はすいすい歩くことができました。場内で日本人ファンを数多く目にしたように感じたのは、地元の来場者が少なかったせいかもしれません。

デモ隊と警察当局の衝突があった湾仔駅構内。一見、平静を取り戻した感じだが…

滞在先の近くに、デモ隊と警察が衝突した場所の一つである湾仔(ワンチャイ)駅があり、筆者はレース前日の土曜日(7日)に足を運んでみました。人の往来は実に普通で、駅近くの売店も平素通り営業し、競馬新聞をスムーズに購入できました。駅の中も平静を取り戻しているかのようでしたが、破壊され「未能使用(使用できません)」と表示された案内板など、所々に衝突の爪痕を見て取ることができました。

日本での報道は少なくなりましたが、激しい衝突はなくともデモはまだ続いているようです。競馬に限らず観光や経済へこれ以上の打撃とならないよう願うばかりです。

昨年は地方競馬のハッピーグリンを含め31頭の日本調教馬が8カ国の海外レースに出走し、前々回の中野雷太アナウンサーのコラムにもあった通り、過去最多の海外G1年間8勝。うち筆者は5勝の実況を担当しました。巡り合わせに感謝です。年が明けてからもサウジアラビアやドバイへの日本馬の遠征が報じられるなど、積極的な海外挑戦は続きそうです。今年も日本馬の海外での活躍をたくさん実況できるようにと期待しています。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 小塚歩)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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