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「ダサカッコイイ」菅田将暉 昭和の着こなしを今風に

コラムニスト いで あつし

第56回ギャラクシー賞で、テレビ部門の個人賞に選ばれた菅田将暉さん(2019年5月、東京都渋谷区)=共同
記者会見でのスーツ姿、人気ドラマの主人公のファッションなど、メディアで話題にのぼる人の着こなしは気になるもの。そんな「ニュースな人」のファッションの背景にあるものとは。男性ファッションに詳しいコラムニスト、いであつし氏が解説します。



いやはやどうも昨年末は、さながら菅田将暉祭りであった。暮れもおしせまった12月28~30日には「3年A組―今から皆さんは、人質です―」の一挙再放送をやっていて、ついついチラチラとまた全話見てしまい、フントニモー、ちっとも大掃除がすすまなかった。

着るものから髪型、持っている小物まで若者に影響力

そして大晦日の「NHK紅白歌合戦」初出場である。今回の紅白の目玉はラグビーオールジャパンを前にユーミンが歌う「ノーサイド」でもなく、竜に乗って「ドラゴンボール超」主題歌を歌う氷川きよしでもなく、全然似てないAI美空ひばりでもなく、間違いなく「まちがいさがし」を歌う菅田将暉であった。なにしろアータ、いま最も人気、実力ともにある若手俳優ですからね。

さらにここが最も筆者が注目していることなのだが、菅田将暉はファッション的にも、同世代の今どきの若者たちから圧倒的な支持を得ている。んや、正確に言うと、「菅田将暉のファッションセンスがわかるか、わからないか」が、今どきの若者たちのお洒落(しゃれ)に対するリトマス試験紙みたいになっているのだ。

菅田将暉のファッションを一言で表せば「ダサカッコイイ」。ドラマや映画では「カメレオン俳優」と呼ばれるように役に合わせてスタイリストが用意した服を着てるんだろうが、それでも菅田将暉が着ると独特の着こなしになる。これも彼のダサカッコイイセンスが成せる技である。

ダサカッコイイ菅田将暉スタイルの基本は、昭和の時代を思わせるような着こなしだ。例えば、大阪のオバチャンが着るような派手なヒョウ柄のシャツや、ヤンキーが着るようなボンタンシルエットのパンツやアロハシャツ、1980年代のDCブランドの肩パッドの入ったソフトスーツのようなダブルのジャケット。お洒落にまったく興味がない人から見たら、菅田将暉の私服は「ちょっと品のいいチンピラのお兄ちゃん」なんて言われているらしいが、いやぁ~、まさに言い得て妙であります。

雑誌の表紙を飾ることも多い(BARFOUT! 2019年2月号 ブラウンズブックス)。菅田将暉さんは服の着こなしでも定評がある

しかしこの「ダサカッコイイ」、モード的には実はいま世界的なトレンドでなんである。装飾的なファッションとは正反対の「ノームコア」ブームの反動から生まれたトレンドで、欧米では「CAMP(キャンプ)」と呼ばれていて、なんでも米国の作家スーザン・ソンタグのエッセイからつけられたキーワードなんだそうだ。過剰で悪趣味すれすれで、ダサいけれどもアーティスティックという意味合いで使われるらしい。アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブディレクターになった「グッチ」や、「バレンシアガ」から火が付いて大ブームになったダッドスニーカーなどが、まさにそれである。

だからなのか、菅田将暉は嫌いじゃないけれども(むしろ大ファン)、私服のセンスはイマイチよくわからなくて、彼氏には絶対真似をしてほしくないという女子も多いのだ。いずれにしても、着るものから髪型、持っている小物まで、ファッションも若者に影響力がある芸能人が久しぶりに出てきた。キムタク以来である。

紅白歌合戦、金髪ツンツンヘアにロングニットで登場

ということで昭和世代のオジサン(筆者ね)は、大晦日に紅白初出場の菅田将暉はいったいどんなファッションで出てくるのかワクワク期待しながら見たのだった。

まずは、同じく初出場の「King Gnu」の応援で登場した時の格好。しかしオジサンにはこのバンドも下北沢とか高円寺で古着をディグってる若者みたいでヨクワカラン。「ボクも大ファンでライブにも行きます」と応援コメントした菅田将暉はというと、「セカンドレイヤー」というLAのスケーターブランドのブレザーを前ボタン全開で着て白シャツに古着の細タイと迷彩パンツ。菅田将暉にしてはかなりコンサバじゃね? ちなみにシャツは「ターンブル&アッサー」だったそうですよ。

日本アカデミー賞の授賞式で、記念写真に納まる(左から)最優秀主演男優賞の菅田将暉さん、最優秀監督賞などの是枝裕和監督、最優秀主演女優賞の蒼井優さん(2018年3月、東京都内)=共同

そして、いよいよ待ってましたのご本人初出場。筆者としてはかつてモックン(本木雅弘のことね)が白いスーツに首からコンドームをぶら下げて登場したみたいに、そのくらいのことやっちゃってくれるかなと思っていたのだが、意外にも地味。ロングニットにカーゴパンツという、至極シンプルでラフなファッションで登場したのだ。

しかしこのシンプルでラフな衣装こそが、派手な気合入りまくりの衣装を着た出場歌手だらけの紅白の中で逆にひときわ目立って、いやぁ~、さすが今どきのファッションアイコン菅田将暉であります。金髪に染めたツンツンヘアにニットスタイルで歌う姿を見て、思わず筆者は「セックスピストルズのジョン・ライドンじゃん!」と思ったが、若い子たちは違って「ドラゴンボールのスーパーサイヤ人じゃん!」と一斉にSNSでコメントしたらしい。あら、そうなのね。世代のギャップ感じちゃいます。

さて、その紅白で着ていた腰まで隠れるロングニットだが、どうやら「メゾン マルジェラ」なのだそうだ。おー、さすが菅田将暉。マルジェラといえば足袋シューズとか八の字ライダースジャケットとかエッジが効いてるアイテムが服バカな若者に人気のメゾンブランドじゃんねー。ちなみにお値段約10万円。紅白放送直後にあっというまに同じものがネットで売り切れたらしい。面白いのは、「これなら買える!」と似たようなロングニットで2000円のやつを探してネットに紹介する若い子もいたりして、なんだか微笑ましい。

ハイブランドから古着までミックスして着こなす

その後に登場して「浅草キッド」を歌ったビートたけしの格好もシンプルなタートルニットのスタイルで、これまたネット上で「ビートたけしの格好、菅田将暉とモロ被り!」とプチ炎上した。まぁこれは偶然でしょうけどもね。

菅田将暉さんに自社の服を着てもらいたいというブランドは多い(2019年5月、東京都渋谷区)=共同

むしろ、たけしの格好を真似しているのは菅田将暉である。菅田将暉が好んで着ている私服の一つに「COOGI(クージー)」というブランドがあって、なんと80年代にビートたけしも着ていたニットブランドなのである。その当時流行(はや)った派手な幾何学模様を得意とするオーストラリアのニットブランドで、NYのラッパーに人気があるんだそうだ。

私服は古着屋で買うことが多いという菅田将暉。おそらくクージーの派手な幾何学模様ニットも90年代の古着を揃えている古着屋で見つけて、彼の感性にピンときちゃって買ったに違いない。ちなみによく行く古着屋は東京・三軒茶屋にある「ノワール」というお店だそうですよ。

いずれにせよ、ハイブランドや古着や誰も着ないようなブランドの服を自分らしくミックスしてお洒落に着こなしてまう菅田将暉は、バレンシアガのジャージーにダッドスニーカーを履いて代官山あたりのモード系セレクトショップなんかでお買い物をする、今どきのダサカッコイイ服バカ男子たちの憧れのファッションアイコンなのだ。

でもねぇ、トーク番組「おしゃれイズム」で飲み友達の俳優の東出昌大が「自分の娘が菅田将暉みたいな格好した彼氏を連れてきたら絶対に交際を断る!」と言ってたけど、筆者もそうだな。お父さんは絶対断る。

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN'S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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