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世界の鉄鋼大手 苦境続く 10~12月期 9割が損益悪化

自動車・建設の需要減 高炉休止などリストラ加速

世界の鉄鋼メーカー大手の業績悪化が続いている。2019年10~12月期は欧米アジアの主要企業の9割で最終損益が前年同期から悪化したもようだ。貿易摩擦による世界的な景気減速で自動車や建設などの需要が減少し、鋼材価格の下落も重なって業績を圧迫している。採算改善に向け、高炉休止などリストラの動きが相次いでいる。

粗鋼生産量が多い企業の決算実績と市場予想をQUICK・ファクトセットで集計した。7~9月期実績は25社中22社で最終減益や赤字転落となり、損益が悪化した割合は88%と過去10年のピークだった12年1~3月期(83%)を超えた。19年10~12月期も、予想がある17社のうち15社(88%)で業績悪化が見込まれており、損益悪化の割合は4四半期続けて80%超で高止まりする。

粗鋼生産量で世界最大手のアルセロール・ミタルは10~12月期に3四半期連続の最終赤字となる見込み。最終赤字の市場予想平均は3億3700万ドル。7~9月期は鉄鋼事業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が7割減った。数量減と鋼材あたりの利幅縮小が重なり、固定費削減の効果をかき消した。

米国ではUSスチールが7~9月期に2年半ぶりに最終赤字に沈み、10~12月期も赤字が続きそうだ。7~9月期は国内圧延鋼板の納入価格が15%下落。トランプ政権が輸入鋼材に追加関税をかけた18年には国内鋼材の価格上昇の恩恵を受けたが、長続きしなかった。

アジアではインドのタタ製鉄が10~12月期には8割超の減益になると予想されている。国内で新車販売が伸びず、欧州事業も低迷する。

余った鋼材は東南アジアに安値で輸出された。欧州の需要減で行き場をなくしたロシア産やトルコ産の鋼材も東南アジアに流れこみ、価格下落に拍車をかけた。

この影響は日本勢にも及んだ。鋼材の4割程度をアジア中心に輸出する日本製鉄JFEホールディングスなどの採算が急激に悪化。両社とも20年3月期通期の業績予想を下方修正した。中国は商業用不動産向けを中心に需要が堅調だったが、国際市況悪化の影響を免れなかった。宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄は19年12月期通期で4期ぶりの減益になりそうだ。

業績悪化の長期化で各社はリストラを加速している。USスチールは12月、20年4月以降にミシガン州のグレート・レイクス製鉄所の高炉や熱延などの設備を休止すると発表。タタ製鉄は欧州で3000人を削減する方針だ。日本でも日本製鉄が生産設備の集約を検討する。

事業環境には底打ちの兆しもある。グローバルの総合PMI(購買担当者景気指数)は19年12月まで2カ月連続で改善した。米中貿易摩擦は小康状態にあり、鋼材市況も反発している。これを映して、日本製鉄やJFEなどを含む世界の主要鉄鋼メーカーの株価指数(QUICK・ファクトセット算出)は10月から足元まで2割弱戻した。

もっともSMBC日興証券の山口敦氏は「経済指標はまだ弱さが目立ち、世界景気が明確な上昇トレンドに入ったわけではない」と収益環境の先行きには慎重な見方を示す。世界の鉄鋼大手が苦境を抜け出せるか、不透明感は強い。(森国司)

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