4年連続「世界一」のVW 待ち受ける中国EV減速

自動車・機械
ヨーロッパ
2020/1/15 10:20
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VWが中国の地方の若者を取り込むために導入した新ブランド「ジェッタ」も販売を下支えした=ロイター

VWが中国の地方の若者を取り込むために導入した新ブランド「ジェッタ」も販売を下支えした=ロイター

【フランクフルト=深尾幸生】独フォルクスワーゲン(VW)が14日発表した2019年の世界新車販売台数は18年比1.3%増の1097万台だった。過去最高を更新し、4年連続世界一が濃厚になった。世界最大市場である中国の環境は厳しかったが、VWは0.6%増を確保しシェアを高めた。もっとも20年以後を見通すと、その中国に不安が潜む。成長の柱と位置付ける電気自動車(EV)の市場は急ブレーキがかかっており、大がかりな投資が実を結ぶかどうか予断を許さない。

19年の世界一の確定はトヨタ自動車と仏ルノー・日産自動車三菱自動車連合の発表を待つ必要がある。そのトヨタは19年12月に19年の見込み値として1072万台と公表しており、ルノー日産連合は伸び悩んでいる。VWが首位を守った可能性が高い。

VW乗用車ブランドのユルゲン・シュタックマン販売担当取締役は「19年は市場でのシェアを拡大しグローバル市場の地位を固めることができた。ブランドや商品、販売網の力を示す結果だ」と自賛した。傘下のブランド別ではVW(乗用車)が0.5%増の627万台、アウディは1.8%増の184万台だった。地域別では市場全体が堅調だった欧州が3.9%増の455万台。北米は0.5%減の95万台だった。

19年10月時点で「18年並み」と予想していた世界販売台数を14万台も上積みできたのは、中国での健闘が大きい。中国(香港を含む)での販売台数は423万台で、全体の39%を占めた。規模で欧州全体にほぼ匹敵し、収益性は最も高いVWの浮沈を握る地域だ。19年は1~6月が前年同期比3.9%減と苦しんだが、7~12月に4.7%増と巻き返した。

中国の自動車市場は停滞色が鮮明だ。米中貿易摩擦を背景とした中国景気への先行き不安を背景に、市場全体では19年は18年比8.2%減と2年連続で前年割れした。そんな中でVWが前年比増を確保できたのは、商品戦略が奏功したためと言える。セダン系よりも市場の落ち込みが少ないSUVで、現地生産5車種を含む8車種を19年に投入した。VWブランドではSUV比率は18年比10ポイント上昇し30%に達した。

地方の若者を狙って9月に導入した廉価なサブブランド「ジェッタ」も4万3千台売れ、販売を下支えした。日本円換算で約100万~180万円を目安に、これまで取り込み切れていなかった初めて車を買う客層にアピールしたこと。こうした取り組みの結果、トヨタやホンダとともに米ゼネラル・モーターズ(GM)や日産、韓国・現代自動車のシェアを奪った。

19年は中国での商品戦略が市場環境にはまったVWだが、20年には不安が横たわる。EVなど走行時の温暖化ガス排出を抑えた「新エネルギー車(NEV)」が振るわないことだ。業界団体の中国汽車工業協会によると19年のNEV販売台数は4.0%減の120万台。補助金の削減が響き、初の前年実績割れとなった。

2020年には中国で戦略EV「ID.」シリーズの生産を始める=ロイター

2020年には中国で戦略EV「ID.」シリーズの生産を始める=ロイター

VWはそのNEVに大きな投資をしている。19年末時点で中国で14車種のEV・プラグインハイブリッド車(PHV)をそろえた。20年は合計年間60万台の生産能力を持つ2つのEV専用工場を立ち上げ、NEVの品ぞろえを30以上に増やす。20年単年のEV投資は約16億ユーロと中国全体の投資の4割を占め、EVが戦略の主軸となる。

中国汽車工業協会は20年のNEV市場についても「楽観できない。横ばいか微増になれば悪くない」としている。19年のNEV販売のうちVWが主力とするEVは1.2%減とPHVよりは落ち込みが小さかったとはいえ、VWが20年のNEV販売の目標とする40万台は市場の状況からすればかなり野心的と言える。

20年は欧州市場も欧州連合(EU)が新しい二酸化炭素(CO2)排出規制を段階的に導入することにともなう混乱が予想される。ドイツ自動車工業会(VDA)は前年比2%減と見込む。米国もVDAが3%減と予測するなど力強さを欠く。逆風が続くなかでさらに販売台数を伸ばせるか、VWの底力が問われる。

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