アジア地域でのがん医療連携を 松田智大氏
国立がん研究センター 企画戦略局国際戦略室長

私見卓見
2020/1/15 2:00
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アジアの中・低所得国で、がんによる社会的な負担が急速に増加している。とくに人口規模が大きい国々で高齢化が進むことによって、アジアのがん患者の数は2018年の875万人から40年には1447万人へと、爆発的に増えることが世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)によって推計されている。

しかし多くのアジア諸国は、がん患者の情報を一括管理する「がん登録」などの情報を持たず、すべての人が十分な保健医療サービスを享受できる状況でもない。予防・診断・治療、全てにおいて早急な対応が必要である。

東アジアのがん罹患(りかん)は肝がんや胃がんが多いなどの点で酷似している。東南アジアまで広げても肝がんは頻発している。背景には病原体など共通の要因があると考えられ、アジア諸国で知見を交換すれば予防・診断・治療方法の水準を底上げできる。また治療法開発に製薬企業の参入を誘い、臨床試験を加速するうえでもアジアの多国間協力が不可欠だ。

現状では国境をまたいだ連携について計画を立案したり、実施を調整したりすることができる専門家の組織がない。系統だった協力関係は乏しく、研究者間のつながりにとどまっている。

こうした課題に対応するため、アジアの国立がんセンター同士を結び、共同事業を進めるための組織であるアジア国立がんセンター協議会(ANCCA)が日本・中国・韓国の主導により05年に設立された。現在14カ国がメンバーとなり、2年ごとに持ち回りで総会を開催している。18年のジャカルタでの総会の際、活動をいっそう活発化させることで合意した。

19年11月27日には初のハイレベル遠隔会議が開催され、8カ国の国立がんセンター長を含む25人がインターネットを通じて顔を合わせた。会議では今後の情報共有に加え、日韓やシンガポールの国立がんセンターで実施している医師への研修事業の推進、がん登録データを利用した共同疫学研究の立ち上げなどが議論された。

IT(情報技術)の進化とともにアジアの距離は確実に縮まっている。ANCCAのような組織を軸に、アジアのがん医療の連携をいっそう進めていく必要がある。

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