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お金の話できる? 共働き夫婦、貯蓄は口座別々が鉄則

2020年版 家計管理術(中)

写真はイメージ=PIXTA

筧家のダイニングテーブルでは夕食後も家計の管理について会話が続いています。幸子と良男がお茶をしていると、スマートフォンで調べ物をしていた恵が「そういえば、子どものいない共働き夫婦はどんな風に管理すればいいのかしら」とつぶやきました。

筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

良男 恵、知り合いにそういう夫婦がいるのか?

 昨年末の会社の忘年会で既婚の先輩が「子どもがいなくて教育費がかからないのに、なぜか貯金ができない」って嘆いていたのを思い出したの。ところで、子どものいない共働き世帯は増えているのかしら。

幸子 総務省の国勢調査によると、子どものいない共働き世帯は2015年時点で約414万世帯。四半世紀前の1990年と比べて4割以上も増えているわ。共働き世帯全体に占める割合も約32%と10ポイント近く増えているの。

良男 共働きなのにどうして貯金できないんだ?

幸子 そもそも、社会保険料の引き上げや控除の廃止などで手取り額が減っているの。ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんの試算によると、40歳以上で専業主婦の妻と15歳以下の子どもが2人いる年収700万円の会社員の手取り額は17年に537万円と、15年前の02年と比べて50万円も減っているわ。さらに、深田さんは貯蓄ができない共働き世帯固有の理由として、「内緒と不干渉」を挙げているの。

 どういうこと?

幸子 「内緒」は自分の収入を何に使うか配偶者に教えないこと。「不干渉」は自分のお金の使い道を聞かれるのは嫌だから相手にも聞かないこと。つまり、お金に関して意思疎通できていないことが根本的な原因ということね。夫婦用家計簿アプリのOsidOri(オシドリ、東京・渋谷)が25~39歳の既婚または婚約済みの女性817人に実施した調査では、共働き夫婦のうち「夫婦でお金の会話が十分にできていない」との回答は4割を超えるの。一方で「もっとお金の話をしたい」との回答も7割を超えているわ。

良男 意思疎通ができないと、なぜためられないんだ?

幸子 共働きだと夫婦それぞれにある程度の収入があるわよね。特に子どものいない共働き夫婦は、教育費の心配がないからお金の使い方を改めるきっかけが少ないの。結婚後も独身のときと同じように趣味や娯楽にお金を使い続けた結果、いざ住宅を購入する際、お互いに貯蓄が少なくてびっくりする、なんてこともあるみたいよ。

 そういえば、忘年会でぼやいてた先輩も高価なブランド品をいっぱい身につけて会社に来ていた気がする。どうしたらためられるようになるの?

幸子 共働き夫婦の生活費の支出の仕方は大きく2つのパターンに分けられるわ。1つは「分担型」。例えば、水道光熱費や家賃の支払いは夫、食費は妻、といった具合に費目ごとに分担を決めて支出し、残りはそれぞれが自分の口座で管理する方法ね。もう1つは事前に決めた分担額を夫婦の「共通口座」に入金して、そこから生活費をまかなったり、残ったら貯金したりする「共通型」よ。

 先輩のところは分担型に当てはまると思うわ。共通型も含め、何が問題なの?

幸子 分担型の場合、配偶者の収入や分担以外の支出、貯蓄額を全く把握できないわ。一方、共通型の場合は夫婦で分担額を話し合って決めるなど、分担型より夫婦の公平性は高いようにみえるけど、例えば支出が多かった場合などは夫婦どちらの責任なのか曖昧になりがちで、節約意識が働きにくくなる可能性があるの。貯蓄まで管理している場合はさらに気をつけたいわ。日常的な買い物に使っている口座にまとまったお金があると、ついつい使ってしまいたくなるかもしれないからね。

良男 共通口座といっても、通常は夫か妻のどちらか一方の名義になるんだよな?

幸子 そうね。夫婦で共用と認識していても実務上は異なるから、住宅購入時や相続時にトラブルを招きかねないの。

 どうして?

幸子 住宅購入の際に同額ずつためた共通口座の貯金を頭金に、残りを夫婦で均等に割って住宅ローンを組んだとするわね。住宅の名義を共有にして負担も持ち分も平等にしたつもりでも、実務上は共通口座の名義人が多く出したとみなされるの。購入資金の負担割合と持ち分が異なると、住宅購入資金を贈与したとみなされて贈与税が課される可能性があるわ。子どもを持たない夫婦は亡くなった人の両親が存命なら法定相続人になるので、配偶者だけで自由に使えなくなるのよ。

良男 どうすれば改善できるのかな?

幸子 貯蓄は夫婦のそれぞれの名義の口座で管理することが最低限必要になるわ。そのうえで、FPの深田さんは「それぞれの給与から毎月一定額を天引きして積み立てて貯蓄する」ことを勧めているの。

 積立額はどうやって決めたらいいの?

幸子 給与やボーナスなどの収入と年間の支出を把握したうえで、夫婦で分担額や目標額を決めるといいわ。夫婦でお金について話し合う機会にもなるしね。天引きは余分に使えるお金を減らして無駄遣いを防ぐ仕組みにもなるから、支出の仕方は分担型でも共通型でも、抱える問題は小さくなりそうね。

毎月の積立額、話し合って


ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
 共働き夫婦は(1)収入額(2)預貯金など資産残高(3)毎月の積立額――の3つを互いに把握するのが理想です。ただ、お金に関する話し合いは避けられる傾向にあります。自分の収入や貯蓄額が配偶者の想定より多いと「配偶者が浪費に走る」と思う人がいるかもしれません。逆に貯蓄額が少ないと「配偶者から無駄遣いを責められる」と不安になるでしょう。
 まずは、ほかの2つに比べて抵抗感が小さい毎月の積立額から把握しましょう。配偶者に毎月の積立額を伝えることは、貯蓄を始めたり続けたりする動機にもなります。年1回程度は実際の貯蓄額を確認し、昇進などで収入が増えたら積立額をいくら増やすかなどを話し合いましょう。こうしてお金に関する相談に慣れてきたら、夫婦で収入額や資産の残高についても話し合うとよいでしょう。
(聞き手は藤井良憲)
[日本経済新聞夕刊2020年1月15日付]

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