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地中海に火種 イスラエルなど3カ国ガス計画

カイロ支局 飛田雅則

東地中海の天然ガスをめぐり関係各国の対立が深まっている。イスラエルは2日、沖合で開発したガスを欧州に運ぶため、地中海の海底を横断するパイプラインを建設することでギリシャやキプロスと合意した。一方、この計画から排除され反発するトルコは8日、ロシアから自国にガスを運ぶパイプラインを稼働させ、将来は欧州への延伸も視野に入れ対抗する姿勢を示す。さらに隣国と境界問題を抱える沖合でのガス開発にも意欲をみせている。東地中海のガスが地域の政情不安を招く火種になる可能性がある。

イスラエル、ギリシャ、キプロスの首脳は2日、地中海を横断する海底パイプラインの建設で合意した=ロイター

イスラエルとギリシャ、キプロスの3カ国が合意したイスラエルやキプロスの沖合にあるガス田からギリシャまで海底でつなぐパイプラインは、総延長は約1900キロメートルで総費用は60億~70億ドルの見込み。AP通信によると欧州の消費量の10%ほどに相当する年100億立方メートルのガスを輸送することが可能だ。2022年までに最終投資決定をし、25年の稼働を目指す。

イスラエル首相「エネルギー大国目指す」

ロシア産のガスに依存する欧州は、エネルギー調達の多様化につながると期待している。ギリシャのミツォタキス首相は「このパイプラインは欧州にエネルギーの柔軟性と独立をもたらしてくれる」と期待する。イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルはエネルギー大国を目指す」と宣言し、「地域の安定をもたらす3カ国の協力はとても重要だ」と強調した。

一方、この計画の蚊帳の外のトルコはロシアからのガスを運ぶ「トルコストリーム」を8日に稼働させ、将来は欧州まで拡大する構想を持つ。トルコは自国を経由して周辺のガス産出国と欧州をパイプラインで結ぶ「ガス輸送のハブ」構想を持っており、「トルコ外し」を狙うイスラエルなどが進める計画に反発する。3カ国の計画が実現すれば、パイプラインの通行料収入が減るうえ、重要な資源の輸送ルートとして自国の価値を国際社会に売り込む戦略が台無しになるためだ。トルコは先手を打ち、地中海の対岸にあるリビア暫定政府と19年11月に排他的経済水域(EEZ)の境界を定める協定を結び、このパイプラインのルートの阻止に動いている。

トルコ、イスラエル対立先鋭化も

トルコの動きに対して、パイプライン計画が阻止される恐れがあるイスラエルやギリシャ、キプロスなどは「一方的にEEZを設定することは国際法違反だ」と反発する。さらにトルコは18年から掘削船や探査船を航行させて、豊富な埋蔵量を持つ東地中海のガス開発に意欲を示している。これに対してキプロスはトルコによるガス開発は違法として、国際司法裁判所に訴える方針を示している。

トルコとイスラエルは近年、聖地エルサレムの帰属問題などで対立が続いている。さらに地中海に浮かぶキプロス島は南北に分断しており、南のキプロスを支援するギリシャと、北のトルコ系が住む地域を支えるトルコは長年いがみ合ってきた。かつてはキプロス政府とトルコ系の住民が戦火を交えたこともある。こうした歴史的、政治的な背景も絡み、ガスをめぐる問題は対立をエスカレートさせる恐れがある。

ただ、地中海産のガスに期待する欧州連合(EU)は、加盟国のギリシャやキプロスを全面的に支援することが難しい状況にある。内戦に伴いギリシャに不法入国したシリア難民をトルコに送還することで、EUとトルコは16年に合意している。足元での戦闘激化でシリア難民が再び域内に押し寄せることを恐れるEUはトルコに強い立場をとることができずにいる。

イスラエルとトルコの関係改善や、南北のキプロスによる和平、シリア難民などの難題が進展しない限り、地中海のガスをめぐる対立は続きそうだ。中東では米国とイランの衝突の危機はひとまず去ったが、地中海のガスが地域の不安定要因になる恐れがある。

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いま大きく揺れ動く、世界経済。 自分か。自国か。世界か。このコラムでは、世界各地の記者が現地で起きる出来事を詳しく解説し、世界情勢の動向や見通しを追う。 今後を考えるために、世界の“いま”を読み解くコラム。

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