山口日本新V、長身生かし力強い泳ぎ 知的障害者50平
裾野が狭く、まだ認知度も低いパラスポーツでは偶然、"金"の鉱脈が発見されることがある。今大会、2種目制覇の山口は典型例だ。
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2016年10月の全国障害者スポーツ大会に高1で初参加した時に好タイムを記録して見いだされ、障害者選手の登録をして競技生活をスタート。そこからの成長曲線は周囲の想像を超えた。
初めての海外遠征が昨年2月。3月の選考会で9月の世界選手権派遣基準記録を突破する。その後は泳ぐたびにタイムを縮め、世界選手権決勝では、男子100メートル平泳ぎで1分4秒95という、史上初めて1分5秒を切る驚異の世界新で初出場初戴冠の栄誉に浴した。
19歳は187センチの体をいかしたダイナミックな泳ぎが特長だ。足長も30センチと大きく、股関節も柔らかい。この日も平泳ぎでは力強いストロークで他を圧倒。「ストロークとキックの練習をやりこめば、もっと速くなれる」と充実した表情で語った。
昨年来、競泳の強豪、山梨学院大水泳部と何度も合同合宿を組んだことが成長を促した。ロンドン五輪女子平泳ぎで2つのメダルをとった鈴木聡美の隣で泳ぎ、「オリパラで協力しているので、自分も勇気をもって大会に取り組める」と大きな刺激に。
実はスイミングスクールに本格的に通い始めたのも高1からで、バタフライや背泳ぎはまだぎこちない。ということは掘れば輝く鉱脈がさらに埋まっている可能性が高い。50メートルで29秒台を出したことで、目指す100メートルの1分2秒台も見えてきた。「東京2020までしっかり取り組みたい」。目標はもちろん、自らの世界記録を更新しての金メダルである。
(摂待卓)