消えぬ関税、くすぶる不満 米中、15日に合意署名

米中衝突
2020/1/13 16:35
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【北京=原田逸策、ワシントン=河浪武史】米中両国政府は15日、貿易協議での第1段階の合意文書に署名する。中国が米国産の農産品やエネルギーを購入し、米国が中国製品への追加関税を下げるのが合意の柱。中国側は追加関税を完全に取り消せなかった不満がくすぶり、米国も最重視する中国の構造問題はほぼ手つかずだ。双方とも第2段階の協議に宿題を残した形だが、米中の相互不信は根深いままだ。

第2段階の合意に向けた難題は多い(2019年5月、協議終了後に握手する中国の劉鶴副首相(左)とライトハイザーUSTR代表(右)。中央はムニューシン米財務長官)=AP

「追加関税を取り消せなかったことに、北京の多くの役人や専門家が満足していない」。米中摩擦を研究する地方政府の職員は明かす。

今回の合意は、中国が米国のモノやサービスの輸入を2年で2千億ドル(約22兆円)増やす一方、米国は2019年12月に予定した追加関税の発動を見送り、同9月に発動した追加関税も15%から7.5%に下げる。追加関税は「下げ」にとどまり、撤廃されなかった。

米中協議が暗礁に乗り上げた19年5月、中国交渉団を率いた劉鶴(リュウ・ハァ)副首相は米国に追加関税の取り消し、輸入規模の縮小、協定文言の見直し――の3つの要求をした。最重要は関税取り消しで、中国商務省の高峰報道官も「第1段階の合意の重要な条件」と繰り返してきた。

では、なぜ中国は合意したのか。12月の関税対象だった1600億ドル分の中国製品のうち、スマホとノートパソコンが半分を占める。これら電機産業は850万人の雇用を抱えて製造業で最大だ。内需中心の自動車などと異なり、売上高の輸出比率は5割を超し、追加関税がかかれば雇用不安が起きかねなかった。

すでに中国企業は工場の海外移転を急ぐ。ベトナム政府によると19年1~6月の外資の直接投資のうち全体の4割超が中国(香港含む)からだ。昨年末に現地を視察した中国政府の官僚は「紡績や玩具など労働集約型産業にとどまらず、車載電池など中国が重視するハイテク産業も移転し始めている」と話す。追加関税拡大は製造業の空洞化を加速しかねなかった。

米国はトランプ氏が対中輸出の拡大にこだわり、構造改革を先送りして「第1段階の合意」をのみ込んだ。米国産の農畜産品の対中輸出は18年に前年比5割も減少し、トランプ氏の支持基盤である中西部では、経営破綻に追い込まれる農業事業者もあった。

第2段階の協議では、中国の産業補助金など構造問題が主題となる。トランプ氏は「すぐに始める」と繰り返すが、中国は「第1段階の合意の履行を見極めてから」(廖岷財政次官)と予防線を張る。トランプ氏は「交渉合意は大統領選後になるかもしれない」とも話しており、産業補助金や国有企業改革など日欧も注視する中国の構造改革は実現が見通せない。

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