旅客機墜落、イランの「誤射」浮上 偶発衝突リスク露呈

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2020/1/10 22:52
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【ワシントン=中村亮、ドバイ=木寺もも子】8日のウクライナ旅客機の墜落をめぐり、イランが誤って撃墜したとの見方が浮上した。米国とカナダ、英国が相次いで指摘した。米国とイランの軍事的緊張が極度に高まっていたなか、民間機が犠牲となったもようだ。米国はイラン批判を控え、ただちに緊張が再燃する状況にはないが、墜落は偶発的衝突リスクの高さを改めて浮き彫りにした。

多くの自国民が犠牲になったカナダのトルドー首相は9日、自国や複数の同盟国の分析として、「イランの地対空ミサイル(SAM)が旅客機を撃墜したとの報告を受けた」と明らかにした。ジョンソン英首相もイランの誤射を示す「多くの情報がある」と語った。

ウクライナ国際航空が運航する米ボーイング737-800型は現地時間の8日午前6時ごろ、イランの首都テヘラン近郊の国際空港を離陸した直後に墜落した。ウクライナの首都キエフに向かう便で、乗客・乗員計176人全員が死亡した。ウクライナ外務省によると、イランの82人、カナダの63人、ウクライナの11人らが乗っていた。

複数の米メディアによると、衛星システムやレーダーの情報を分析した米当局者は、イランが防空システムとして稼働させているロシア製SAM2発を発射したと指摘した。現場近くでロシア製ミサイルの破片が見つかったとする写真もネット上に出回っている。

イランは8日午前2時ごろ、イラクにある2つの米軍駐留拠点を弾道ミサイルで空爆している。米軍の反撃に備えるイランが民間機を誤射したとの見方が強まっている。カナダのトルドー首相は「意図的ではなかったとみられる」と述べた。

本格的な武力衝突の回避を探る米国は墜落を巡り明確なイラン非難は控えている。トランプ米大統領は9日、墜落原因について「誰かが過ちを犯すことはありうる」と述べるにとどめた。ポンペオ米国務長官も同日、ラジオ番組で「イランがイランでイラン人を殺したことになり、大変な悲劇だ」と述べたと報じられている。

イラン政府は自国による誤射を否定する。国営テレビは10日、「真っ赤なウソだ」とするラビイー報道官の発言を伝えた。航空当局トップも同日の会見で「現時点で言えるのは、ミサイルによる攻撃は受けていないということだ」と述べた。

国際的な原因調査には協力する姿勢を示す。航空当局は回収したフライトレコーダー(飛行記録装置)の解析について「イラン国内で行いたいが、損傷のため難しければ助力を求める」としてロシア、カナダ、フランス、ウクライナの名前を挙げた。解析には数カ月、墜落原因の究明に1~2年かかる可能性があるとの見通しも示した。

イラン国営通信社は10日、事故調査の会合に米国、フランス、カナダの代表が参加するためテヘランを訪れる予定だと報じた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は10日に「撃墜された可能性は排除しないが、今のところ確認はできていない」とフェイスブックに投稿した。

ウクライナ航空機の墜落現場からロシア製ミサイルの破片が見つかったとの情報がある(8日、テヘラン近郊)=ロイター

ウクライナ航空機の墜落現場からロシア製ミサイルの破片が見つかったとの情報がある(8日、テヘラン近郊)=ロイター

軍事的な情勢が緊迫するほど敵の動きに過剰反応し、誤射は起きやすくなる。イラン・イラク戦争末期の1988年にはホルムズ海峡付近を飛行するイラン航空機を米海軍が撃墜したことがある。2014年にはウクライナ東部でマレーシア航空機がロシア製の地対空ミサイルで撃墜された。事故現場は親ロシア派が実効支配し、ウクライナ軍との戦闘が起きている地域だった。

今回の墜落はイランによる誤射であるというのが事実なら、イランの軍や武装組織が情報の分析や判断、統制に失敗したことになる。中東地域の複雑な対立構造の中では、当事国の首脳が意図しない偶然の衝突がおきて、本格的な戦争にも発展しかねない危険な状況にあることを改めて印象づけている。

犠牲者の国籍ではイランに次いでカナダが多かった。カナダはイランとは国交がないが、カナダメディアによるとカナダにはイラン系が約21万人住む。直行便は飛んでおらず、キエフ経由は比較的安価なルートとして人気があった。

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