尿・血液でがん発見を実用化 ヒロツバイオや東芝など

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2020/1/10 22:00
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企業が尿や血液などの体液から、がんを早期発見する検査サービスに相次ぎ乗り出す。九州大学発のスタートアップが1月、尿を使って15種類のがんを探るサービスを始めた。東芝東レは2021年以降に血液での実用化を急ぐ。体液検査は世界で開発が進んでおり、日本勢は精度の高さが強み。料金は現在の画像診断と同程度かそれよりも割安なケースが多い。がんの早期発見の手段がより身近になりそうだ。

九大発スタートアップで医療サービスを手掛けるHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ、東京・港)。6日から尿を使った解析サービスを始めた。胃や大腸など15種類のがんに罹患(りかん)している場合、「いずれかのがんにかかっている」と判定する。検査人数に対して正しく判定できる精度は85%としている。

尿を活用して幅広い種類のがんを調べるサービスは世界初という。がんを見つけるのは体長1ミリメートルの線虫で、尿に含まれるがんの匂いに集まる性質を応用する。同社の検査を受けられる病院を1月中に発表する予定だ。一般の人が支払う検査料金は1回当たり約1万円となる見込み。

名古屋大学発スタートアップのイカリア(東京・文京)は、肺がんなどの種類を特定するサービスを始める。複数の種類のがんを対象とし、どれにかかっているかを突き止める。精度は90%を超えるといい、「年内に一般の人が利用できるようにする」(同社)。

がんの発見に使うのは体液に含まれ、遺伝子の発現を調節する機能を持つ物質である「マイクロRNA(リボ核酸)」。これを解析するチップなどでがんの種類を見分ける。料金は数年以内に3万円以下に下げる考え。

ヒロツバイオは四国がんセンター(愛媛県松山市)などの医療機関と協力し、がん患者計1000人以上を対象に検査精度を高めてきた。イカリアは数百人規模で検証済みで、今後1万人程度まで増やすという。

これまでのがん検査は体調に異変が生じてからというケースが多かった。症状が無くても体液を使って簡単に検査できるようになれば、早期発見や生存率の向上につながる。米調査会社のグランドビューリサーチは、体液検査の市場が30年に60億ドル(約6500億円)規模になると予測する。

料金の低下も期待できそうだ。現在のがん検査では罹患しているかどうかを調べる場合は保険がきかず、10万円を超える事例もある。体液検査の料金は数万円台が多い。

血液による検査も今後始まる。東芝のサービスは乳がんなど13種類のがんのどれかにかかっていれば、がんに罹患していること自体を99%の精度で判定可能という。21~22年に人間ドックなどで実用化し、費用は2万円以下に抑える計画だ。

体液を使った検査の取り組みはもともと欧米企業が先行。がん細胞や遺伝子などを探し当てる手法が主流で、米アマゾン・ドット・コムが出資する米グレイルなどが実用化に向けて開発を急いでいる。再発がんの検査については、米ガーダントヘルスが強みを持つ。

一方、ここ数年は日本勢が一気に追いつき、先行する構えだ。イカリアや東芝、東レなどの検査はいずれもマイクロRNAを活用する。がんの検査物質として使うと、検査精度が大幅に向上することが分かったためだ。この物質の研究では産学官連携などで日本勢が世界をリードしており、検査市場での日本勢の成長を後押ししそうだ。

ただし体液検査には課題もある。誤判定や、がんを見逃すリスクがなお残る。画像診断では見つからないほど早期のがんを発見した場合、これまで以上に多くの検査が必要になる恐れもある。

各社は当面、保険のきかない自由診療として検査サービスを提供する考え。保険がきく医療とどう組み合わせて活用するかは大きな課題だ。精度の向上に加え、早期発見が治療成績の向上や医療費の削減につながったのかというエビデンス(証拠)を蓄積することが欠かせない。(大下淳一)

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