函館の再開発は二兎を追う、中心市街地に胎動

住建・不動産
小売り・外食
北海道
2020/1/11 1:00
保存
共有
印刷
その他

北海道の南の玄関口、函館市は2019年の地域ブランド調査で6度目の日本一に輝く半面、駅近くにも空き店舗が目につく二極化の街だ。歴史ある百貨店が閉店する目と鼻の先で、観光産業が直面するのはホテルの建設ラッシュ。年間で500万人に達する観光客を駅前の再生に生かすプロジェクトが動き出した。

駅北側で19年12月、ちょうちんをつるした和風の門を観光客や市民がくぐる光景が見られるようになった。大和ハウス工業が建てた複合施設「ハコビバ」の内部にはホテルだけでなく、昭和をイメージした「函館駅前横丁」も設けられている。

「駅につながる広場はイベントなどに開放する。観光客と函館市民が交流する場にしたい」と大和ハウスの堀福次郎顧問は理想を描く。ハコビバにはジムが併設されており、市民がトレーニングに励む。コト消費の充実を急ぐ背景には、ピッチを速める人口減がある。

函館の人口はピークの約34万5000人(1980年)から25万人台に減っている。郊外大型店への消費流出もあり、駅前百貨店の棒二森屋は19年1月末で閉店した。

函館駅前再開発でオープンした「ハコビバ」(北海道函館市)

函館駅前再開発でオープンした「ハコビバ」(北海道函館市)

観光客をカウントすれば函館駅前の人通りは依然として活発。19年度はクルーズ客船が駅横に寄港を始め、国内外の船客が街歩きを楽しむ姿も定着してきた。観光に勢いがあるうちに、中心街の空洞化を食い止めておきたいところだ。観光客だけでも駅前の定住者だけでもなく、函館の再開発は二兎(にと)を追う。

函館のもう一つの繁華街である五稜郭地区には百貨店の丸井今井やテーオーデパート、無印良品がある。これに比べて駅周辺の店舗は業種の広がりが乏しく、衣料なども扱っていた棒二の穴を埋め切れてはいない。

■新幹線でストロー現象も、20年代がカギ

棒二の旧別館は食品店や書店などが入る函館駅前ビルに衣替えし、7月には駅前ビルを含む旧棒二全体の再開発準備組合が発足。関係者によると、20年代半ばを目標にホテル、店舗、交流空間、マンションを整備する案を検討している。

19年に開業した店の大半はハコビバ内を含め飲食店か土産物店だ。駅に近い函館朝市、大門・松風町の店も多くは食関連。「ネット通販に押され、飲食店以外の店は厳しい」(工藤寿樹函館市長)時代とはいえ、人の流れが増えて食以外の多様な店が集まってくる効果に関係者は期待する。

大門地区で映画館などを運営する太陽グループ(札幌市)は、さらに約6700平方メートルの土地を取得しており、再開発の意向だ。東原俊郎社長は「どんな機能が求められるのか。市役所や商店街、市民の要望・提案を聞いて考える」と語る。

函館駅前で再開発を待つ旧棒二森屋(北海道函館市)

函館駅前で再開発を待つ旧棒二森屋(北海道函館市)

16年に開業した北海道新幹線の現在の終着駅「新函館北斗」駅から函館駅までは連絡列車で20分前後。外国人を含めれば年間に500万人以上が訪れる函館観光の人気は続くとみて、ホテル建設は活発だ。函館駅周辺では19年度以降、開業済みから計画段階まで含めて10件近いホテルが新たに整備されつつある。

19年9月にはイオングループが駅近くにマックスバリュ若松店を開業。ホテル宿泊客の食事利用も想定し、2階に大型イートインを併設した。函館駅周辺の事業者がスタンプラリーなどで連携する動きも出てきた。

新幹線が30年度末に札幌まで延伸されれば函館を中心とする北海道南部は終着駅でなくなり、ストロー現象にも直面する。20年代にどこまで街の魅力と機能性を高められるかが、名実ともに「魅力度ナンバーワン」になれるかを左右する。

(伊藤政光)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]