デジタル化対応、税制改革の焦点に 政府税調が議論再開
政府の税制調査会(首相の諮問機関)は10日、委員を刷新したうえで総会を開いた。中里実会長(東大教授)は任期3年の会長職で3期目に入り、働き方の変化や経済のデジタル化に対応した中長期的な税制のあり方を探る。経済構造が変わるなか、先進国では格差の固定化が問題視されている。税の所得再分配機能の回復が大きなテーマとなりそうだ。

安倍晋三首相は首相官邸で開いた総会で人口減・少子高齢化や経済のデジタル化などを課題にあげ、「経済社会の構造変化にスピード感を持って対応していく必要がある」と語った。その上で「持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成を両立させるため、あるべき税制の具体化に向けた審議を求める」と諮問した。
政府税調は2019年9月に、中期的な税制のあり方を示す中期答申をまとめ、今後は消費税の役割が一層重要になると指摘した。一方で所得を再分配する機能の回復に向けては所得税の控除を縮小したり、資産課税を強化したりすることも論点となる。
デジタル化に対応した法人税の見直しや税務行政の電子化なども課題だ。中里氏は10日の会見で議論のテーマは「その都度考えながらやるのが穏当だ」とした。
税制は中長期的なテーマについて政策提言する政府税調とは別に、具体的な税制改正の内容を決める与党の税制調査会がある。自民税調は甘利明会長のもとで政策提言機能も強化しようとしているが、中里氏は「役割分担はできている」と話した。