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肉、旅、トイレ… 全産業に「テック化」の波

【ラスベガス=佐藤浩実、広井洋一郎】音声人工知能(AI)や自動運転技術の話題が相次いだ世界最大級の技術見本市「CES」。一方で、会場を歩くと新たに加わった「異業種」の姿も目を引く。食品に航空会社、そしてトイレ。参加企業の裾野の広がりは、デジタル技術が企業活動の根幹になり、誰もが「テック企業」であることを求められる時代を映し出す。

自動車部品やセンサーメーカーが屋外ブースを展示する一角。観葉植物を飾った異色のテントに人だかりができていた。目当ては次から次へと配られるバインミー(ベトナム風サンドイッチ)だ。挟んである分厚い「肉団子」がだだっ広い会場を歩き疲れた人たちのおなかを満たす。

もっとも、この「肉団子」の材料は豚のミンチではなく、大豆タンパク質やココナツ油といった植物由来の材料。代替肉を手掛ける米インポッシブル・フーズがCESに合わせて披露した新製品で、材料を分子単位で解析することでリアルな豚ひき肉の食感や味わいに近づけた。「言われなければ気づかない」と、試食した人たちの評価も上々だ。

今年の基調講演のトップバッターにエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)が立った米デルタ航空のブースにも、長い行列ができていた。見る人に合わせて空港内の電子看板の表示を変える「パラレルリアリティー」の技術体験だ。天井のカメラで利用者一人ひとりの位置を把握し、モニターを見る角度に応じて映像を切り替えてゲート情報などを適切な言語で示す。

試しに「ラスベガス発成田行き」のチケットを選ぶと、日本語での案内が現れた。近くにいる米国人の体験者からは英語で案内が見えているという。デルタ航空は2020年中に米デトロイトにある空港にこの技術を導入し、顧客の反応を確かめる。

日本勢で異彩を放っていたのがTOTOだ。トイレの個室に車輪がついたような車を披露。曜日やイベントの有無に応じて、人とトイレの数のバランスが崩れそうな地区に車両を持ち込む。利用者はスマホアプリを使って、その時々に一番近くにあるトイレを見つけられる。すでにサンフランシスコで1台が実証実験中だ。

これまでテクノロジーの印象が薄かった分野がCESで存在感を放つようになった理由を読み解くキーワードはスタートアップだ。例えば、シリコンバレーに本社があるインポッシブルは11年設立のユニコーン企業。パット・ブラウンCEOは「食品は世界で最も重要で影響があるものなのに、長く有意義なイノベーションが起きていなかった」と指摘する。テックの力をひっさげて食を変えるというわけだ。

デルタやTOTOが披露した新技術やサービスもスタートアップとの協業のたまものだ。デルタが導入する電子看板の技術を開発したのはワシントン州で14年に生まれたミスアプライド・サイエンシズ。TOTOが披露したトイレ付き車両とアプリを介したサービスの基盤を開発したのもサンフランシスコにあるグッド・トゥ・ゴーという新興企業だ。

デルタのバスティアンCEOは、協業によって新たな発想や技術を取り込む重要性を強調する。多くの企業が成長の壁にぶつかるなか、スタートアップとの連携を通じて自社の事業を変革しようとしている。CESを主催する全米民生技術協会(CTA)のゲイリー・シャピロ会長は「すべての企業がテック企業になる」と指摘する。

コーポレートベンチャーキャピタルの隆盛が大企業とスタートアップの協業を促しており、約4500社にのぼる出展企業の多様性は今後ますます広がっていくだろう。ショー用に見栄えのよい技術を見せることにとどまらず、テクノロジーを使って企業や産業のあり方を変えていけるかが問われることになる。

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