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「ピグマリオン」 バロックの知性輝く(オペラ評)

いずみホール

様々なダンスが舞台を彩った=樋川 智昭撮影

いずみホールの独自企画「古楽最前線」の2年目は中後期バロックがテーマ。ホール・オペラの枠組みでラモーの「ピグマリオン」に至るフランスのオペラ・バレの魅力を現代に甦(よみがえ)らせ、未知の世界への扉を開いた(12月14日、大阪市のいずみホール)。

急逝した礒山雅の企画を引きついだ寺神戸亮の才覚が光った。前半はリュリを中心にトークを交えたオペラ・バレのオムニバス。「アティス」では松本更紗がバロックダンスの粋を披露。ソプラノの波多野睦美は「町人貴族」の「イタリア人のエール」を、「喉の中に蝶々(ちょうちょう)がいるような」フランス・バロック特有の節回しで情感豊かに歌った。

後半は岩田達宗の演出と小尻健太の振付による「ピグマリオン」。1748年にパレ・ロワイヤルで初演され、ラモーの人気作に。ピグマリオンは自作の彫像への恋に苦悩するが、愛の神が彫像に命を吹き込む。様々なダンスが舞台を彩り、村人たちと共に愛の神を賛美する大団円に至る。酒井はなと中川賢の洗練されたコンテンポラリーダンスの躍動はラモーの音楽の形象化だ。現在に奔(はし)り出る「古楽最前線」の意図が成就した。

ピグマリオン役のドビューヴルは27歳の気鋭。オートコントルと呼ばれる軽やかなハイテノール歌手で、フランス語特有の鼻濁音が心地よい。愛の神役の鈴木美紀子が存在感を示し、他の歌手も節度をもって自由に戯れ、過剰にも技巧的にもならない。知性輝く「良き趣味」の真髄(しんずい)を通して理想の共同体のヴィジョンが浮かび上がった。

古楽オーケストラのレ・ボレアードの様式感にもフランス・バロックの良き趣味が染みわたる。つかの間の饗宴(きょうえん)。うたかたの夢。ともあれ、オペラ・バレのエスプリに酔いしれる贅沢(ぜいたく)な時間だった。

(音楽評論家 藤野 一夫)

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