俳優・小関裕太さん 子役時代の甘え諭した母

著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は俳優の小関裕太さんだ。
――小学生で芸能界にデビューしました。ご両親のすすめがあったのですか。
「母は『何でもチャレンジしなさい』と背中を押してくれて、父も『子どもの気持ちに親が応えるのは当たり前』というタイプ。僕の興味が向くままに空手や水泳など習い事をたくさんやらせてくれました。そのひとつがミュージカル映画『メリー・ポピンズ』で憧れたタップダンス。ダンススクールに通ったのが、芸能界の仕事を始めるきっかけになりました」
――NHKの子供向け番組「天才てれびくんMAX」に出演されていましたね。
「毎日のように収録があって、本当に楽しかったけれど正直体力が続きません。そんな僕に付き添って送り迎えしてくれた両親の存在は本当に大きかった。だから僕は反抗期が全然なかったんですよ。俳優の仕事で反抗する役がくると、気持ちが分からずに困ってしまいます」
――いきなり飛び込んだ大人の世界で、戸惑うことも多かったのではないですか。
「デビュー間もない頃、先輩のマネジャーさんに『小関君はあいさつしない』と言われたことがあります。『あいさつしたのに……』と泣きながら母に訴えました。すると、『あなたがしたつもりなのは分かった。こんなこと言われるのはつらいね。でも相手に聞こえて初めてあいさつなのよ』と言われました」
「僕の気持ちを理解してはくれるけれど、甘えてはいけないと諭す言葉でした。相手の立場に立ち、物事を俯瞰(ふかん)してみる大切さも教えてくれました」
――普段のご両親は?
「もともと美容師だった母は感性の人。物事を楽しむ心やポジティブさは母から学びましたね。会社勤めをしている父は努力家で粘り強い人。僕の雰囲気は父に似ているとよく言われます。送り迎えの車中では、TUBEやサザンオールスターズの歌を父とハモったなあ」
――小関さんが大人になってからはどうですか。
「一度、僕の方から『男飲みしようよ。今日はおごるからさ』と父を誘いました。父の若い頃の思い出とか会話自体はたわいもなかったんですが、『裕太と酒飲めるようになったんだ。こんな日が来るとは思わなかった』と父はうれしそうでした。僕にとっても大切な時間でした」
――親孝行になりますね。
「両親は僕が出た映画やテレビ番組は全部見てくれているし、僕が撮った写真の展覧会にも来てくれました。今は僕も妹も実家を出ているのでさみしさを感じているかもしれません。小さなことですが、できるだけ実家に帰るようにしています。両親はかなりの労力を僕に割いてくれました。だからこそ僕も、何事も中途半端にせずに頑張らないといけないと思うんです」
(聞き手は生活情報部 河野俊)
[日本経済新聞夕刊2020年1月14日付]
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