ウェブ会議で争点整理 模擬手続きを公開

民事裁判IT化の一環で、裁判所と弁護士事務所などをウェブ会議でつないでやりとりする取り組みが2月に始まるのを前に、最高裁は9日、東京地裁で模擬手続きを報道陣に公開した。ディスプレーを介して互いの顔が見える状態で話し合いを進め、書面を共有して編集する手順を確認。参加者は「手続きの迅速化につながるのでは」と期待を寄せた。
手続きにはマイクロソフトのクラウドサービス「オフィス365」に含まれるチャットツール「チームズ」を使用。車とバイクの交通事故を巡る損害賠償訴訟を想定し、裁判官のいる法廷と原告、被告双方の代理人役の弁護士の事務所をウェブ会議システムでつないだ。
弁護士らは事故現場の図面をディスプレーに映しながら「車が徐行しなかった」「バイクが一時停止しなかった」などと主張。従来の音声だけの電話会議では、現場の状況について、共通の認識を持ちながら話すのは難しかった。
裁判官は双方から個別通話で賠償額などについて意見を聴き、和解協議に移行。弁護士が作成した和解条項案の文書ファイルをチームズ上にアップロードし、裁判官が賠償額を記入するなどして完成させた。
地裁の江原健志裁判官は「電話会議に比べ、ウェブ会議の優位性は明らかで、審理を迅速に行える」と強調。参加した山崎雄一郎弁護士も「30分から1時間程度の時間があれば、事務所にいながら手続きを進められる」と話した。
ウェブ会議を活用した争点整理手続きは2月3日から全国8地裁と知的財産高裁(東京)で運用が始まる。最高裁民事局の富沢賢一郎総括参事官は「現場の裁判官も機器の取り扱いに慣れてきており、スムーズに開始できる」と話している。