中国、景気減速下の物価上昇 19年8年ぶり上昇幅
豚肉高騰が原因 大幅利下げ難しく、景気対策足かせに

2020/1/9 15:28
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【北京=原田逸策】中国で景気が減速しているのに物価が上がっている。9日発表の2019年の消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇し、上昇幅は11年以来8年ぶりの大きさだった。アフリカ豚コレラ(ASF)のまん延で豚肉が高騰した。中国政府は20年の物価目標を「3%前後」で据え置くもようで、大幅な利下げに動きづらい。景気減速と物価上昇を両にらみする難しい政策運営になりそうだ。

アフリカ豚コレラのまん延で中小の養豚業者を中心に出荷量が落ち込んだ(2019年10月、遼寧省大連市)

「春節(旧正月)が間近だ。市場の物資供給を保ち、価格を安定させることに全力を挙げてほしい」。李克強(リー・クォーチャン)首相は8日の国務院(政府)常務会議でこう指示した。

中国人にとって春節休みは最も大事な休暇だ。家族や親戚にごちそうを振る舞おうと食材を買い込むため、物価が上がりやすい。今年の春節は1月下旬にあたるが、庶民の食卓に欠かせない豚肉が高騰しており、例年以上に物価高を警戒する。

19年のCPI上昇幅は18年より0.8ポイント拡大した。通年では政府目標を下回ったが、夏場以降に上昇が加速し10~12月は3カ月連続で目標を上回った。12月は11月に続き、前年同月比4.5%も上昇した。

アフリカ豚コレラが猛威を振るって多くの豚を殺処分したため、夏から豚肉価格が高騰したのが主な原因だ。19年の豚肉の平均価格は前年比42%上昇し、12月単月は前年同月比97%も上がった。

足元では上昇は一服している。前月比でみると12月の豚肉価格は5.6%下がった。下落は19年5月から7カ月ぶり。政府が対策を打ち出し、供給が増えたからだ。

農業農村省によると、豚の出荷頭数は8月から11月まで減り続けたが、12月は前月比14%増えた。中国税関総署によると、11月の豚肉の輸入は6億2700万ドル(約700億円)と前年同月比4.1倍に急増した。

ただ、豚肉価格がこのまま安定に向かうかどうかは不透明だ。アフリカ豚コレラの勢いは収まらず「一言でいえば依然として複雑で厳しい」(農業農村省の于康震次官)。特に豚の出荷が急増する春節前は伝染病が広がりやすい。今後も安定供給を保てるかどうか綱渡りがつづく。

20年も物価はしばらく高止まりしそうだ。19年も夏場までは豚肉が安かったため、20年前半は比較対象となる「発射台」が低く、CPIは上がりやすい。国盛証券は19年12月のリポートで「前年同月比でみたCPIの上昇幅は20年1月にピークを迎え、7月までは4%台が続く」と予想した。

ロイター通信は1月、中国政府が20年のCPIの目標を19年と同じ「3%前後」で据え置くと報じた。中国では政府の物価目標は「上限」を意味する。年前半は目標を大幅に上回りそうで、アフリカ豚コレラが収束しなければ目標達成は簡単ではない。

問題は製造業を中心に経済の減速が続いていることだ。製造業の経営環境を映す卸売物価指数(PPI)は19年に前年比0.3%下落し、16年から3年ぶりに前年を下回った。19年12月のPPIも前年同月比0.5%下がった。製造業の景況感は回復し、株式市場などで景気への楽観論が広がるが、肝心の工業製品の出荷価格は前月比でみても上がっていない。

中国人民銀行(中央銀行)は11月に公表した「貨幣政策執行報告」で「インフレ期待の拡散への警戒が必要」と物価高に異例の言及をした。物価目標の据え置きもあり、政策金利は下げにくい。

李首相は民間企業の資金調達難の解決を繰り返す。人民銀も行政指導で貸出金利下げを銀行に迫るが、景気減速で融資が焦げつくリスクはむしろ上がっており、一筋縄では進んでいない。20年も民間企業の資金繰り倒産が高水準で推移すれば、雇用や個人消費にも影を落としかねない。

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