トランプ氏、「刹那主義」が招いた危機

2020/1/8 19:13
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トランプ米大統領はイラン革命防衛隊司令官の殺害を「戦争を抑止するためだ」と説明していた(7日、ワシントン)=ロイター

トランプ米大統領はイラン革命防衛隊司令官の殺害を「戦争を抑止するためだ」と説明していた(7日、ワシントン)=ロイター

トランプ米政権がイランで英雄視される司令官を殺害した判断は、中東情勢の流動化を招いた。イラク議会は米軍撤収を求め、イランは米国への報復攻撃に踏み切った。米軍の最高司令官であるトランプ大統領の長期戦略なき「刹那主義」が招いた事態といえ、世界はさらなる不確実性と向き合わざるを得ない。

「戦争を抑止するためだ」。トランプ氏は革命防衛隊精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害の理由をこう説明してきた。だがトランプ氏の主張に反して米イランの対立はより先鋭化し、軍事衝突の危険が高まる。

司令官殺害はイランの支援を受けるとされるイラク武装勢力の攻撃で米国人が死傷したことに報復したものだが、米軍のメインシナリオにない「最も極端な選択肢」(米メディア)だった。イラン側の猛反発を予期し、オバマ前大統領など歴代政権が見送ってきた計画とされる。

米国防総省の元当局者は「トランプ氏が司令官殺害の副作用を考慮したとは考えにくい」とみる。イラクの議会は米軍に撤収を求めており、米軍が担ってきた過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦が宙に浮きかねない。

トランプ氏は中東の軍事的関与を減らすという選挙公約を掲げて大統領になった。シェールオイルの増産で米国は世界最大の産油国になり、「脱・中東」への道筋をつけたはずだった。

だが今回の司令官殺害がイランの反米意識を刺激し、米国が中東関与の長期化を余儀なくされる可能性がある。中東諸国には「イランと戦う米国に中東の親米国を守る覚悟があるかとの疑念がある」(ワシントン近東政策研究所のダナ・ストロール研究員)という。トランプ氏の場当たり的ともいえる決断は、憎悪や疑念が渦巻くいまの状況を招いた。(ワシントン=中村亮)

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