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自らチームの輪の中へ 先発落ちも無駄でなく

2019年最後の試合はウエスカと同じアラゴン州にあるサラゴサとの一戦だった。試合前には同州マーケティング部からの依頼で、サラゴサの香川真司と、州内を紹介する動画と対談の撮影をした。真司とはスペインに来てから普段もよく会っているので、改めて取材をともに受けるのは不思議な感覚だった。

試合は2-1でウエスカが勝った。ベンチスタートが3試合続いた後、先発に復帰した僕は先制点を決めた。左サイドからのクロスボールに反応した、狙い通りの形。それまでは、ニアサイドでクロスを受けることを考えていたけれど、それではつぶれ役になるだけで終わってしまう。絶対に点を取れる場所にいようと、ゴール中央で勝負した結果だった。

ウエスカに加入してしばらくは先発で起用された。しかし、12月に入ると控えに回るようになった。代わって使われたのはドリブルや身体能力に優れた選手たち。自分の得点だけでなく、チームのことを考えてプレーしようと思い始めた直後のことだった。

岡崎は先発を外れたことで、練習でサブ組の選手と絡む機会が増えたという=共同

守備ができる。運動量が豊富。幅広いエリアでプレーできる――。そう僕を評価してくれても結局は、個性が際立つ選手が選ばれる。「またか」と残念で悔しい気持ちになったけれど、得点を決めないからこういうことになると、納得する部分もあった。

どこに行っても僕の前に立ちはだかる壁にスペインでもぶつかった。そこで考えた。チームメートにとって僕は、イングランド・プレミアリーグの優勝イレブンであり、即戦力の外国人助っ人という目で見ている。本当なら、ドイツ・マインツ時代のようにゴールという結果を重ねて、自然とチームに溶け込むのが理想だが、ウエスカではそれができていなかった。

しかし、先発を外れたことで、練習でサブ組の選手と絡む機会が増えた。冗談を言い合ったり、ふざけ合ったり、自分から声を出してチームの輪の中へ飛び込んでいくようにした。すると、周囲との関係が変わり始めた。

「シンジ、そのままの格好で行くつもりか?」

12月7日のラージョ戦。ベンチの面々が口々にツッコミを入れながら笑っている。ウオーミングアップする間もないくらい、いきなり交代出場を告げられた僕は、すね当てどころかソックスも履かないまま、ピッチに入ろうとしたのだ。恥ずかしかったが、それ以上に、チームの輪に入れた実感があった。先発から3試合続けて外れたことも無駄ではなかったのだ。

スペイン語もろくに話せない外国人選手は、得点を挙げることでしか、居場所を作れないと思っていた。が、自分から動くことで状況を変えられた。初心というか、9年前に初めて清水からドイツに来たときのことを思い出した。

(ウエスカ所属)

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