抗議デモ、SNSで不満拡散 香港やチリ、経済に爪痕
ビジュアル世界情勢(3)

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2020/1/8 0:00
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2019年6月、香港島のビクトリア公園を市民が埋め尽くした。デモ隊は中国に批判的な人物が本土へ移送されうる条例改正に反対し「(改正を)撤回しろ」などの看板を掲げて立法会(議会)まで行進した。デモは主催者発表で200万人近くと中国返還後で最大となり、今も混乱は収まらない。

4カ月後、抗議デモは南米チリでも発生した。地下鉄料金の値上げに反発した学生らが全国で抗議活動を展開した。ピニェラ大統領は非常事態宣言を発令し、軍政終了から初めて軍の出動を要請。地下鉄値上げの撤回だけでなく、最低賃金引き上げなどの対応を強いられた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議やサッカーの国際試合などが中止になり、観光や企業活動に大きな影響が出た。

世界各地で連鎖する抗議デモ。多くは小さな出来事がきっかけだ。チリでは地下鉄値上げ、エクアドルでは燃料補助の打ち切り――。若者を中心に経済格差や体制への不満が慢性的に高まるなか、ツイッターなどのSNS(交流サイト)で不満や怒りが拡散し、大きなうねりを引き起こす。

パリでは12月、マクロン政権の年金改革に反対するデモが全土に広がり、参加者が約80万人に達した。18年11月に記録した反政権デモ「黄色いベスト」の参加者約29万人を大きく上回り、不満がくすぶり続ける。

大規模デモの発生は政治経済に大きな影響を与える。香港では19年11月の区議会議員選挙で、民主派が全議席の8割超を獲得した。チリでは一部閣僚が更迭され、大統領選を巡って混乱が続くボリビアではモラレス大統領(当時)が国外へ亡命した。

「電気や水が不足している。政府はなんとかしろ!」。中東のイラクの首都バグダッドなどで10月以降、抗議デモが続く。デモ参加者は「腐敗した政治家が石油の富を横領しているからだ」と主張。治安部隊との衝突で400人以上が死亡し、アブドルマハディ首相は11月下旬に辞任を表明した。レバノンでは10月に政府が「ワッツアップ」など無料の通信アプリへの課税を打ち出したことに若者らが反発。課税案は撤回され、10月末にハリリ首相が引責辞任を表明したが、デモは続く。

経済への爪痕も深い。香港ではデモによる交通のまひが長期化し企業活動に影響が出ているほか、観光客も遠のく。チリは19年の経済成長予想を大幅に下方修正し、特にデモの影響が直撃した10~12月期ではマイナス成長になったようだ。混乱が経済停滞を生み、景気悪化が市民生活を直撃してさらに不満が高まる悪循環となっている。

(メキシコシティ=丸山修一)

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