今日も走ろう(鏑木毅)

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受験の苦労、無駄じゃない 多様な経験積み人生に幅

2020/1/9 3:00
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先日、大学入試の国語と数学における記述式導入の見送りが公表された。英語の民間試験利用と同じく、なりゆきに少々驚くと同時に、それに振り回される受験生を気の毒に思う。ただ、どのような受験スタイルに変わろうとも、大学入試を乗り越えるには膨大な時間と労力を費やし、努力することが求められるのは変わらない。

一般的によく「入試突破のための勉強は社会では役にたたない」などといわれてきた。大学受験は本当に全く役に立たないのだろうか。そうは思えない。

慣れない執筆活動は受験勉強さながら

慣れない執筆活動は受験勉強さながら

まずは受験を通じて得る成功体験。受験で大きく将来が変わりかねないという重圧は、青年期においては最も大きな試練であろうし、目的を達成できれば何物にも勝る自信になることは間違いない。不合格という挫折体験でさえ、成功以上に意義深いものになる可能性もある。

限られた時間の中で、物事を筋道立てて考える力も格段に身につくのもこの時期。いま自分は何を優先すべきか、あることを成し遂げるにはどのようにすればよいのか、といったことは、もちろん受験以外でも磨くことはできる。だが人生を左右しかねない大きなプレッシャーの中で培えば、知らず知らずのうちに状況判断力は磨かれていくだろう。

無駄だ、と揶揄(やゆ)されてきた知識の詰め込みにしても案外役に立っている。例えば、国語の難解な文章を読み解いたり、歴史の知識や当時の時代背景を徹底的に学んだりした(当時は苦労した)過程があったからこそ、今という時代の情勢を読み解く目を持てる。

かくいう私自身、そのことに気付いたのは比較的最近だ。若い頃は苦労に苦労を重ねて得た学歴自体、さほど社会で生かされず、あの努力は何だったのかと悩んだ。大学入試の話題やその苦労は触れたくない過去だった。クリスマスからお正月と世間が浮足立った時期でも、一人寂しく机に向かう受験期のむなしさを思い出すので、どちらかといえば冬は嫌いだった。

だが、自分がアスリートにとどまらず幅広く活動できるのは、人一倍苦労した受験という体験が生きているのではないかと先日、指摘を受けてはっとした。スポーツ推薦などで順風満帆に学歴が手に入ればそれに越したことはない。それもその時点までの実力や努力の評価であるからだ。ただ、実力本位のスポーツの世界ではいつ引退せざるを得ない時期が訪れるかわからず、引退後の方が長い人生と考えれば多様な分野のキャリアを積んだ方が選択の幅は広がる。

サラリーマン社会もかつてのような終身雇用制度は徐々に姿を消し、最終学歴が人生の大半を左右するような状況はなくなりつつあるようだ。受験も我々の頃のような切迫感は存在しないのだろうか。それでも若者にとって人生のどこかで生かせない体験など何一つありはしない。仮に失敗してもいずれ必ず取り返せる。少しでも前向きに広い視野で受験勉強に取り組み、楽しみを見いだしてほしい。

(プロトレイルランナー)

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