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J1、来るか神戸時代 個と規律の「欧州型」追求
サッカージャーナリスト 大住良之

関西
兵庫
2020/1/9 3:00
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元日に新国立競技場で行われたサッカーの天皇杯全日本選手権決勝、なかでも前半45分間のヴィッセル神戸の出来は出色だった。Jリーグ時代になってから最も成功したクラブであり、毎年優勝争いに加わる鹿島アントラーズが「何もできない」という状態で2-0とリードを奪い、鹿島がやや持ち直した後半もほとんど決定的なチャンスはつくらせずに初めてのビッグタイトル。2020年はいよいよ神戸がJリーグで優勝争いか――。そんな期待を抱かせるに十分な勝ちっぷりだった。

天皇杯サッカーで初優勝を果たし、喜ぶ神戸イレブン=共同

天皇杯サッカーで初優勝を果たし、喜ぶ神戸イレブン=共同

岡山県で活動していたジャパンフットボールリーグ(旧JFL)の川崎製鉄水島を1995年1月に神戸に移して誕生したのがヴィッセル神戸である。「Vissel」とは、「Victory(勝利)」と「Vessel(船)」を合わせた造語で、国際的な港湾都市である神戸をシンボライズしたものだ。

流通大手のダイエーがメインスポンサー。しかしクラブ誕生の直後に発生した阪神大震災の影響でダイエーが撤退、いきなり苦しい船出となった。その後、04年に楽天の代表取締役である三木谷浩史氏が新会社を設立してチームの経営権を取得。17年から楽天がスペインの超名門クラブ、FCバルセロナのメインスポンサーとなったころから一挙に新路線、いや「新航路」へと舵(かじ)を切った。

17年には元ドイツ代表のFWルーカス・ポドルスキ、そして18年には元スペイン代表のMFアンドレス・イニエスタと、相次いでワールドクラスの選手を獲得して一気に人気クラブとなり、19年にも元スペイン代表のFWダビド・ビジャ、現役のベルギー代表選手であるDFトーマス・フェルマーレンを獲得。その流れは、Jリーグが外国籍選手の登録数制限撤廃と出場選手枠を5人に広げたこと(19年)でさらに勢いを増した。

神戸はビジャらワールドクラスの選手を相次ぎ獲得して人気クラブに=共同

神戸はビジャらワールドクラスの選手を相次ぎ獲得して人気クラブに=共同

世界レベルの各国代表クラスだけではない。19年にはC大阪からMF山口蛍、鹿島からDF西大伍、ドイツのハンブルガーSVからDF酒井高徳と、日本代表クラスも獲得、またたく間に選手層を厚くした。

神戸が追求しているのは、欧州のトップクラブに伍(ご)する力をつけることだ。そのチームづくりは、まさに「欧州型」といってよい。

鹿島も「ブラジル型」から「欧州型」への舵切りを図っているというが、「欧州型」とは、短くいえば「個と規律」と表現できるのではないか。

チーム力のベースは個々の選手の能力にある。それはどんなチームにとっても同じことなのだが、「欧州型」ではそれぞれのポジションで最高クラスの選手をそろえようと努力する。とくに攻撃面においては、決定的なパスのできる選手、突破のできる選手、そして何より、コンスタントに得点を取れる選手ということになる。

攻撃の最後の段階(突破、シュート)においては、「欧州型」では選手の判断、裁量が最大限に尊重される。ひとりで突破して得点できるなら、いうことはない。

その一方で、守備においては「規律(ディシプリン)」が何よりも重要だ。攻撃から守備への切り替え、前線の選手からの守備の厳しさと忠実さは、「欧州型」の最も顕著な特徴といえるかもしれない。どんなに攻撃の才能がある選手であろうと、守備のタスクを実行できない選手は使われない。そこから守備が破綻していくからだ。

6月に就任したフィンク監督(中央)はチームに守備の規律を植え付けた=共同

6月に就任したフィンク監督(中央)はチームに守備の規律を植え付けた=共同

天皇杯決勝での神戸は、「欧州型」を見事に表現していた。3-4-3の布陣。どのポジションにも世界クラス、あるいは日本のトップクラスの才能が並び、攻撃を自在に切り開いた。そして守備では、ブラジル人のDFダンクレー、フェルマーレンという屈強なストッパーの中央に才能豊かなDF大崎玲央が位置し、その前に「ボール狩り」で有名な山口が位置する守備のブロックは非常に堅固だった。当然のことながら、ポドルスキ、FW古橋亨梧、FW藤本憲明といった攻撃陣も、相手ボールになった瞬間に猛烈な勢いで相手にプレッシャーをかけた。

19年の神戸は、18年9月に就任したスペイン人のフアンマヌエル・リージョ監督の指揮でスタートを切ったが4月に辞任、前年にも指揮をとった吉田孝行が後任となった。しかしJリーグでリージョ監督の指揮下から始まる7連敗という記録をつくってしまい、6月にはドイツ人のトルステン・フィンク監督が就任した。

神戸の苦戦の原因が守備にあったのは明らかで、フィンク監督はそれまでの4バックから3バックに変更するとともにチーム守備の規律を植え付け、シーズン半ばに加わったフェルマーレンや酒井の活躍もあって最後の3連勝で8位に順位を上げた。

酒井(手前左)ら日本代表クラスの補強もチームの選手層を厚くした=共同

酒井(手前左)ら日本代表クラスの補強もチームの選手層を厚くした=共同

Jリーグで間違いなく最強の個がそろったチームに規律を植え付けたフィンク監督。その手法は、まさに「欧州型」といってよい。

19年のJリーグでは、アンジェ・ポステコグルー監督のまず「戦術ありき」で戦い抜いた横浜Mが優勝を飾った。その「戦術オリエンテッド(志向)」のサッカーとはまったく対照的な「個と規律」の「欧州型」神戸。20年のJリーグは、この2クラブを見据えながら、どのような方向に進んでいくのか。そして「欧州型」として日本のトップを突っ走る神戸がJリーグの新たな支配者になっていくのか、大いに注目したい。

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