7000万人流浪、狭まる受容 欧州難民危機から5年
ビジュアル世界情勢2020(1) 難民

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2020/1/6 0:14
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中東やアフリカから多数の難民が押し寄せ、欧州政治を揺るがした難民危機から2020年で5年。戦乱などで故郷を失った人々は19年6月時点で約7000万人と、15年末から1割増えた。このうち正式に難民認定を受けて国外で暮らすのは約2500万人に上る。受け入れの負担は重く、当初は寛容な姿勢を見せていた国でも、移動を制限したり送還を試みたりする動きが出ている。

「遠くないうちに100万人がシリアに帰還できるだろう」。トルコのエルドアン大統領は19年12月、ジュネーブでの難民フォーラムで、360万人にのぼる国内のシリア難民について語った。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界で最も多く難民を受け入れているのはトルコだ。だが最近の経済低迷を受け、難民への視線は厳しい。19年半ば以降、難民をイスタンブールなどの大都市から、シリア国境に近い南東部などに送り返すなどの締め付けが強まった。

トルコは10月、シリア北部への越境軍事作戦を始めた。トルコがテロ組織とみなすクルド系武装勢力を掃討して確保した「安全地帯」の目的の一つが、こうしたシリア難民を送り返すことだ。トルコによると既に37万人が「自発的に」戻っているという。

ただトルコに滞在する難民の多くは北部出身ではない。国土の大半を掌握したアサド政権から迫害される恐れもあり、どれだけの難民が安全地帯への移住を望むかは不明だ。16年にトルコと欧州連合(EU)が欧州に逃れる難民を抑制する合意を結んだことで難民の移動は激減していたが、19年半ばごろからギリシャへの渡航が再び増えた。

欧州への流入が加速すれば反移民感情が過熱しかねない。極右政党も各地で台頭する。第2次大戦を招いたナショナリズムや全体主義という「古い悪魔」(マクロン仏大統領)への懸念は強い。

バングラデシュ南東部コックスバザール近郊。以前は森林で覆われていた丘が連なる一帯に、ミャンマーから逃れたイスラム系少数民族ロヒンギャの難民キャンプが広がる。UNHCRによると約90万人が生活する世界最大の難民キャンプだ。

ミャンマー国軍は17年、警察施設に対する武装襲撃を契機にバングラデシュ国境地帯のロヒンギャの村で掃討作戦を展開した。わずか数カ月間で住民74万人が越境した。

バングラデシュ政府は難民を受け入れてきたが、難民の中から過激派が台頭したり違法薬物が流通したりするなど「地域全体の脅威になりつつある」(ハシナ首相)。19年9月以降、キャンプ内で携帯電話のデータ通信を規制した。難民の一部を沖合の島に移転させる計画もある。

難民は危険を覚悟でマレーシアなど第三国への脱出も試みる。12月には173人を乗せた船がミャンマー南部の沖合で同国海軍に拘束された。

南米ベネズエラは歴代政権の失政や米制裁で経済が崩壊し、国民が大量に流出している。全国民の14%にあたる約460万人が難民や移民として祖国から逃れた。

彼らがたどり着くのは周辺国だ。20年中にコロンビアは人口の5%、ペルーは3%にあたるベネズエラ人を国内に抱えることになる。ボゴタやリマなど主要都市の路上に難民があふれ、治安悪化が問題となるなか「ゼノフォビア(外国人嫌悪)が高まりつつある」とUNHCRは懸念する。

(ベイルート=木寺もも子)

2020年の世界情勢はどこへ向かうのか。世界地図で概観する。

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