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「独占の線引き、ルール作りを」 池田毅氏

グーグルやフェイスブックなど「GAFA」と呼ばれる巨大企業の台頭が健全な競争環境を脅かしている。企業の力では解決できない課題にどう立ち向かうべきか。独占禁止法に詳しい池田毅弁護士に聞いた。

池田毅(いけだ・つよし)氏 2002年(平14年)に京大法卒、弁護士事務所を経て05年から07年まで公正取引委員会事務総局審査局勤務。08年カリフォルニア大学バークレー校ロースクール修了。09年ニューヨーク州弁護士・カリフォルニア州弁護士登録。41歳

「巨大IT規制、独禁法で対応可能」

――巨大IT(情報技術)企業に対する規制として独禁法は有効なのでしょうか。

「独禁法は独占を禁止していると思っている人が多いが、そうではない。競争を阻害する行為を規制するのが目的だ。例えば1つの市場で独占的な立場を持つ企業は隣接する分野に支配力を広げられる。こうした問題に対処するのは古くから独禁法が得意としてきた」

――データの時代は市場ごとの境目が曖昧になります。

「競争の捉え方は1つではない。デジタルの時代は競争の軸が複数ある。例えば消費者の時間を奪うという軸では幅広いサービスが競合する。状況に応じて、規制すべき目的に合わせてシェアを算出する市場を決めれば良い。あまり扱ってこなかったが、今の独禁法で対応可能な範囲だ」

――企業のM&A(合併・買収)に対する向き合い方も変わっていますか。

「デジタル化の進展で、M&Aによる影響を予測するのが難しくなっている。阻止したからといって競争上の弊害が起こらないとは限らない。例えばフェイスブックは競合のSNSを買収した。仮に両社が競争し、どちらかが潰れると競争に費やした時間や才能は無駄になる。それなら買収した方がイノベーションにつながる」

――イノベーションを阻害せずに独占の弊害を解消するのは可能でしょうか。

「どのタイミングで介入するか、という時間軸は難しい。あまり早く規制すると、イノベーションの芽を摘んでしまうリスクがある。一方、長い間放置すると、巨大化しすぎて対処が手遅れになりかねない」

「プラットフォームの初期段階についてルール作りを考えるべきだ。例えばキャッシュレス決済や配車アプリなどは初期に大規模な資金を投じてキャンペーンをする。赤字を出していても、資本力があれば一人勝ちできる。本当にイノベーションを生もうとする企業が体力で負けてしまう」

「GAFAがイノベーション促進も」

――データは集まるほど価値を生みます。独占は必ずしも悪いことではないのでしょうか。

「GAFAがイノベーションを促進する面は確実にある。適正にビジネスを展開すれば、その周辺でイノベーションが起きるからだ。公正な競争を阻害しないなら独占のままでもよい。『GAFAを解体すべきだ』と言う人は独禁法を理解していないのではないか」

――GAFAなどの巨大IT企業による独占の弊害はどう解決すべきでしょうか。

「デジタル時代の独占はまだ明確な基準がない。欧州連合(EU)の欧州委員会は一つ一つの事例に対して丁寧に審査している。個別の課徴金だけでは解決しないかもしれないが、将来のルール作りにつながる。正しさの線引きを愚直にやるのが将来役に立つだろう」

記者はこう見る「革新そがぬ規制を」 清水孝輔


 グーグルやフェイスブックなどGAFAと呼ばれる大企業に対する風当たりが強まっている。スタートアップを買収して将来の競合となり得る企業の芽を摘み、人々のデータで莫大な利益をあげている点が批判される。米民主党の次期大統領選有力候補の一人であるエリザベス・ウォーレン氏はGAFAを分割する構想を掲げた。
 人工知能(AI)時代もGAFAが革新をけん引する可能性が高い。AIの世界的な研究者、ジェフリー・ヒントン氏は「データ量とコンピューターの性能がAIを進化させる潮流は続く」と指摘する。弊害が生まれつつあるのも確かだが、IT(情報技術)革命で消費者に恩恵をもたらしてきたのはGAFAのような企業だ。
 「GAFAが適正にビジネスをするなら周辺でイノベーションが加速する」。独占禁止法の専門家である池田毅弁護士が取材の中で口にしたのが強すぎる反発への不安だ。巨大企業が生むイノベーションを妨げては本末転倒だ。革新をそがずに独占の弊害に対処する工夫が求められている。

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