台湾総統選、最終盤も蔡氏優勢 中国圧力、米援護射撃で防御

米中衝突
政治
中国・台湾
2020/1/3 17:44
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【台北=伊原健作】11日に投開票が迫る台湾の総統選は、対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)現職の蔡英文総統(63)が優勢を維持したまま最終盤に入った。香港の政情混乱を受けて高まる対中警戒感が追い風となっている。中国は軍事・外交などで蔡政権への揺さぶりを強めるが、米国の台湾接近の動きが世論の動揺を防いでいる。

民進党の蔡英文総統(1日、台北市の総統府)

台湾では1日から世論調査の公表が禁じられた。民放TVBSが直前の昨年12月29日に実施した最新調査では、蔡氏の支持率は45%と、対中融和路線の最大野党・国民党の韓国瑜(ハン・グオユー)高雄市長(62)に16ポイント差を付ける。美麗島電子報の調査ではその差は約28%に開いている。

蔡氏は支持固めに向け中国への対抗姿勢を一段と鮮明にする。1日に総統として発表した新年の談話では、中国が「全面的に(社会に)浸透している」と情報工作への対策強化を訴えた。「民主主義と専制は同一国家で併存できない」とし、中国が目指す(高度な自治を認めるとする)一国二制度を用いた統一を拒否すると強調。香港の二の舞いを避けようとする市民の危機感に訴える。

国民党は自ら劣勢に拍車をかけた面も大きい。総統選と同時実施の立法委員(国会議員)選を巡り11月、比例区名簿の2位に香港デモの民主派を「暴徒」と切り捨てた元大学教授を組み込んだ。4位の元陸軍中将は退役後に度々訪中し、中国・北京の人民大会堂で習近平(シー・ジンピン)国家主席の演説に聴き入る姿がテレビに映されたこともある人物だった。

最悪のタイミングで党への親中懸念を引き起こした格好だ。韓氏は親中色の払拭に躍起だが、直近のテレビ討論会で対中政策への言及を避けるなど苦しさが目立つ。「蔡政権が続けば庶民の生活は一段と悲惨になる」と経済格差に不満を持つ人々に訴えるが、対中警戒感が強い若者や無党派層に支持が広がらない。

対中関係は蔡氏の弱点になる可能性もあった。蔡政権は中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を認めず、中国は圧力を強める。しかし対中関係を悪化させたとの蔡政権への批判は盛り上がらない。「米国との関係強化が衝撃を和らげている」(民進党関係者)からだ。

中国は16年の蔡政権発足以降、台湾周辺での軍事演習を活発化。昨年3月末には中国軍機が中台の実質的な停戦ラインである台湾海峡の「中間線」を越えて台湾側空域に侵入した。一方で米国は同年に戦車やF16戦闘機など重要兵器を台湾に売却すると相次ぎ表明し、台湾の防衛強化に踏み込む姿勢を示した。

外交では中国の圧力を背景に、蔡政権下で7カ国が相次ぎ台湾と断交し、中国側と国交を樹立した。台湾を国として承認するのは残り15カ国まで減った。また国民党の馬英九・前政権時代は可能だった世界保健機関(WHO)などの国際機関へのオブザーバー参加もできなくなった。

対する米国は台湾との実務を担う窓口機関を通じて10月、台湾と外交関係を持つ南太平洋の4つの島しょ国への援助を協議する「太平洋対話」を台北で開催。台湾外交を支える構えを見せた。また米国務省高官や国会議員らは、台湾の国際機関での活動への支持を繰り返し表明している。

中国の圧力下で蔡氏は日米など「民主主義の理念を共有するパートナーとの関係を強める」ことに活路を見いだそうとしてきた。トランプ米大統領が対中通商交渉で台湾を中国をけん制するカードとして使っているとの懸念はある。それでも中国への警戒感が強まるなか、蔡氏の対外政策は一定の支持を集めている。

台湾メディアは今回の総統選を米中の「代理戦争」と報じる。米国は中国のアジアでの海洋進出を警戒し、域内国家と連携する「インド太平洋戦略」を推進。国防総省は親米的な蔡政権の台湾を「有能なパートナー」と位置づける。

中国にとっては親中的な国民党が政権を奪還すれば、東アジアへの米の介入を防ぐ体制を築きやすくなる。11日の選挙は米中の勢力争いに影響する重みを持つ。

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